第1314回
「のび太のくせに生意気だ!」

最近、香港・マカオで地元の旅行ガイドと
中国本土から来た観光客の間のトラブルが原因の
暴力事件が立て続けに発生しました。

最初に起こったのは香港。
安徽省から来た団体観光客の中の夫婦と、
香港の女性ガイド2人が口論の末に殴りあいになり、
4人全員が警察に逮捕されました。

原因はガイドが「本土からの観光客には
礼儀を知らない人がいる」と発言したり、
宝石店で買い物を強要したりしたこと、とのことで、
観光客側は70万香港ドル(750万円)の賠償金を要求、
最終的に12万香港ドル(130万円)で和解したそうです。

そしてマカオでは、
遼寧省からの観光ツアーに参加した男性が
「態度が悪い」と女性ガイドを激しくののしり、
それを見た男性ガイドが止めに入ったところ、
観光客3人に袋叩きにされて、
病院に運ばれたのだそうです。

その後、この事件を知った地元のガイドたち約100人が集結して、
この観光客が乗る大型バスを5時間にわたって包囲して抗議、
翌日未明に観光客側が謝罪してようやく解散となったのだそうです。

新聞などのメディアはこれらの事件について
「香港・マカオは一国二制度で、
中国本土とはマナーや風習が違うためトラブルが起きやすい」
という解説をしていますが、
私はそんな軽いものではなく、
香港・マカオと中国本土の立場逆転による、
フラストレーションの爆発、
未来の国でのび太社長の下で働くことになった
ジャイアンとスネ夫の「のび太のくせに生意気だ!」という
心の声にも似た、もっと根深いものであるような気がします。

イギリス領だった香港、ポルトガル領だったマカオは、
1997年と1999年の中国への返還以降も、
一国二制度により資本主義経済を継続し、
人々は豊かな生活を続けてきました。
そんな香港・マカオの人たちにとっては、
中国本土の人たちは貧乏で自分たちより一段下の存在でした。

しかし、近年は中国の急速な経済発展により
豊かになった中国本土の人たちが旅行に来るようになり、
香港・マカオの観光産業は、
一段下に見ていた中国本土の人たちによって
支えられるようになりました。

こうした微妙な立ち位置のねじれが、
香港・マカオのガイドたちに失礼な態度を取らせ、
中国本土の人たちの暴力を誘発したのではないでしょうか。

以前、高度経済成長でお金持ちになり始めた日本人が
大量に海外旅行に出かけ、
ヨーロッパなど経済が停滞するかつての大国では
「のび太のくせに生意気だ!」と思われて、
ぼったくられたり、蔑んだ目線を注がれたりしました。
今後、世界を旅行する中国人観光客が増えるに従って、
彼らは香港・マカオ以外の地域でも、
現地の人たちの「のび太のくせに生意気だ!」という
自尊心と嫉妬がない交ぜになった感情との摩擦を
乗り越えていかなくてはならないのではないかと思います。





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2011年3月9日(水)

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