第1315回
中国で爆発的に売れる金

今、中国で金が爆発的に売れています。

中国工商銀行は今年1月、約7トンの金現物を売却しました。
これは2010年の売却量のほぼ半分に相当するのだそうです。

同行の貴金属部門幹部は、
「中国での金への需要は爆発的だ。
中国人は豊かになってきており、
投資家は投資の分散に目を向けている。
金はインフレヘッジ商品として突出している」と語っています。

中国の今年1月の消費者物価指数(CPI)は
前年同月比4.9%の上昇となり、
上昇率は前月の同4.6%から更に加速しました。
このままインフレが加速すれば、
せっかく稼いだ人民元が
どんどん目減りしていってしまいますので、
中国の人たちは手元の人民元を投資して
インフレによる資産の目減りを防がなければなりません。

しかし、ノーリスクの定期預金の金利は1年もので3%。
これではインフレによる資産の目減りを
カバーすることはできません。

かと言って、不動産は
中国政府が不動産価格抑制政策に本腰を入れ始めており、
いつ下落に転じるかわかりませんし、
株式はピーク時の1/3以下まで株価が暴落して
大損した記憶がまだ生々しく、怖くて手が出せません。

そんな中、インフレに対する強さと優れた換金性を持つ
信頼できる投資先として注目されたのが金なのです。

中国では伝統的に、その時々の為政者の都合で
いつただの紙切れになってしまうかわからない紙幣より、
いざという時には持って逃げられて、
世界中どこでも換金できる金を
資産として持つ習慣があります。
このため香港など資本主義の中華圏の街に行くと
政府が発行した紙幣を扱う「銀行」よりも
金の売買をする「金行」の方が良く目に付きます。

その金を珍重する血は
一度は社会主義国となった中国本土の人たちの体の中にも
脈々と流れているようで、
北京のデパートやショッピングセンターの宝飾品売場に行くと、
他の宝石などのコーナーは閑古鳥が鳴いているにも関わらず、
金のコーナーだけはいつも人だかりがしています。

稼いだ人民元をせっせと金に換えていく中国の人たちを見ると、
国家というものを全く信用していない
リバタリアン(自由至上主義者)の血を感じさせます。


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2011年3月11日(金)

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