第1332回
今、重慶が「紅い」!

今、重慶が「紅い」です。例えば、

1.重慶市の地元のテレビ局が
「解放大西南(じえふぁんだーしーなん、
大西南を解放せよ)」とか、
「為了新中国前進(うぇいらしんちょんぐぉちぇんじん、
新中国のために前進せよ)」といった、
毛主席時代を舞台にした歴史大作ドラマの放送を始める、

2.テレビの娯楽ドラマやコマーシャルを大幅に減らして、
その代わりに「天天紅歌会
(てぃえんてぃえんほんがーほい、毎日革命歌大会)」
などという番組を始め、市民に「紅歌(ほんがー、
毛主席時代によく歌われた革命歌)」を歌わせる、

3.「ベチューン精神模範病院」や
「雷峰(れいふぉん)式学生」など、
各分野の模範的な単位や個人に、
革命時や毛主席時代に私利私欲無く献身的に
国や他人のために働いた人たちの名前を冠した
賞を授与する、などなど。

既に資本主義国家となった現代の中国で、
毛主席率いる共産主義国家時代の中国を
髣髴とさせるようなキャンペーンを繰り広げているのは、
重慶市のトップ・薄熙来(ぼーしーらい)党委書記です。

薄熙来氏と言えば、
革命第一世代である薄一波元副首相を父に持つ、
いわゆる「太子党」派の番頭格。
大連市長、遼寧省長、商務部部長を経て、
2007年に重慶市の党委書記になってからは、
「共青団」派で、現在は広東省の党委書記を務める、
前任者の汪洋(わんやん)氏に対して、まるで
「あんた、在任中、何やってたんだ!」と言わんばかりの
徹底した暴力団・汚職官僚一掃キャンペーンで
武名を馳せました。

その薄熙来氏が昨年あたりから大々的に始めたのが、
毛主席時代への回帰を訴える
これらの「紅色キャンペーン」です。
「中国は豊かになりつつある。
しかし、カネのためには何でもするような
人間ばかりの国にしてはいけない。
ついては、中国共産党の革命の原点に戻って、
私利私欲ではなく、国や他人のために
行動することを学び直そう」ということのようです。

拝金主義国家に成り下がってしまったかのように見える
今の中国においては非常に大切な考え方ですし、
中国の人たちが金銭的に豊かになるだけではなく、
精神的にも豊かになるためには必要な揺り戻しだと思います。

しかし、一方でこの「紅色キャンペーン」は、
来年、2012年秋の中国共産党全国代表大会で
中国共産党の最高意思決定機関である
政治局常務委員会の9人のメンバーの1人に
選出されることを狙う薄熙来氏の
実績作りのためなのではないか、という見方もあります。
また、重慶での「紅色キャンペーン」の成功を引っさげて、
これを中国全土に広めることを理由に、
宣伝・イデオロギー担当政治局常務委員・李長春氏の後任となり、
現在25位の自身の党内序列を一気に5位まで引き上げることを
狙っているのではないか、という噂もあります。

「私利私欲を捨てよう」と訴える「紅色キャンペーン」。
「政治局常務委員になりたい」という薄熙来氏の
私利私欲に利用されることがないよう願うばかりです。





←前回記事へ

2011年4月20日(水)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ