第1344回
「ポスト不動産マネー」による不穏な動き

中国の不動産価格の下落開始により、
不動産マーケットから逃げ出し始めた
「ポスト不動産マネー」によると思われる不穏な動きは、
既に出始めています。

最近、コショウの生産・輸出世界一のベトナムでは、
中国人バイヤーによる異常な高値の買付のため、
コショウの価格が1年前と比べて2倍以上に値上がりし、
過去最高の値段を記録しているのだそうです。
このため、ベトナムでは、
高収入が見込めるという期待から、
コーヒー農家が生産物をコショウに切り替える例が
多く出始めているそうです。

この値上がりは多くのコショウ生産国で
生産が減少している、という事情もあるようですが、
タイミング的に見て、
値下がりするつまらない投機対象となってしまった
中国の不動産に見切りを付けた
「炒房族(ちゃおふぁんずー、不動産投機族)」が、
その引き上げた資金を使って
今後はベトナムのコショウを「炒め」始めた、
という可能性も否定できません。

コショウの収穫は年1回で、
5月後半には終了する、とのことです。
6月になって中国で
「コショウが足りない」という噂が流れて、
東日本大震災の後の
「搶塩(ちゃんいぇん、塩の奪い合い)」と同じような
「搶胡椒(ちゃんふーじゃお、コショウの奪い合い)」
が起こったら、それは「ポスト不動産マネー」で
コショウをたんまりと仕入れて更なる値上がりを目論む
「炒胡椒族(ちゃおふーじゃおずー、コショウ投機族)」の
仕業だと考えて間違いないのではないかと思います。

そうした中国での「搶胡椒」の騒ぎが終わって、
「炒胡椒族」がコショウを
高値で売り抜けた後に取り残されるのが、
ベトナムのコショウ農家です。

コショウ価格が元の値段まで下がってしまったからと言って、
コーヒー農家に戻るにはまた1から始めて
少なくとも3-4年はかかります。
「手っ取り早く儲けたい」という
自分の欲で転作したわけですから、
自業自得と言えば自業自得なのですが、
人生が無茶苦茶になってしまう農民も
たくさん出てくるのではないでしょうか。

中国の「ポスト不動産マネー」は、
中国国内のみならず、遠く離れたベトナムでも
たくさんの農民の人生を変えてしまうほどの
パワーを持っています。

私たちは彼らが「炒める」ものに踊らされて
痛い目に遭わないように、
しっかりと芯の通ったビジネスや投資を
していかなければいけないな、と思いました。


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2011年5月18日(水)

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