第1345回
勢いづく清華大学、焦る北京大学

先月、中国の理系の名門大学・清華大学が
創立100周年を迎えました。

日本の国会議事堂に当たる
人民大会堂で開かれた記念式典では、
卒業生代表として胡錦濤国家主席が演説、
「わが国の高等教育はまだ世界の先端水準とは
明らかな差がある」と述べ、
科学技術と教育の重要性を力説しました。

また、壇上には同じく卒業生である
現政権のナンバー2、呉邦国全人代常務委員長、
次期最高指導者に内定している
習近平国家副主席などが並び、
政権の中枢を清華大学出身者が占めていることを
印象づけました。

これに対して焦りを隠さないのが
中国の文系の名門大学・北京大学です。

北京大学生命科学院の饒毅院長は、
創立100周年を迎え勢いに乗る清華大学が、
今年の北京大学の入学生募集に大きな影響を与えるだろう、
との見方を示しました。

北京大学はただでさえここ数年、
受験者数が減っているのだそうですが、
創立100周年で勢いづく清華大学に水をあけられないように、
キャンパス開放日に父兄に対し教育水準の高さを強調したり、
受験時の成績に応じた優遇策を打ち出したり、
受験者数が少なくなっている今が
合格のチャンスであるとアピールしたり、と
なりふり構わない対応策で、
優秀な学生の確保に躍起になっているのだそうです。

今でこそ中国の最高学府の座を争う
双璧と並び称される両大学ですが、
北京大学が1898年に時の清朝政府によって
「京師大学堂」として設立されたのに対し、
清華大学は1911年、義和団の乱の対米賠償金から
資金拠出されて米国留学予備校として設立された
「清華学堂」が発祥であり、
「出自」が良いとはとても言えません。

しかし、新中国成立後の理系重視政策や
文化大革命の影響もあって、
中国の歴代指導部には北京大学出身者は少なく、
相対的に清華大学の地位が上昇し、
現在の全盛期を迎えるに至りました。

ただ、そうは言っても、
多くの北京大学の学生たちは強烈なエリート意識を持っており、
中国の最高学府としての自信とプライドは健在です。

私は北京大学と東京大学の学生が
日中間の問題を徹底的に討論する
「京論壇」(http://jingforum.org/jp/index.html)で、
北京大学の学生さんと話をさせて頂いたことがあるのですが、
彼らはどんな話題でもごく当たり前のように
「自分が中国の将来を背負って立つ」
という前提で話をしますので、
「なんだか司馬遼太郎の「竜馬がゆく」とか
「坂の上の雲」の登場人物みたいだな」
と感じたことを思い出します。

最近は北京大学出身者も
政界では次期首相に内定している李克強副首相や
2023年の国家主席最有力候補と言われる
胡春華内モンゴル自治区党委書記、
経済界では米誌フォーブスの
2011年度版中国長者番付でトップに輝いた
中国最大のインターネット検索サイトである
百度の創業者・李彦宏董事長兼CEOなど
若手の人材がどんどん頭角を現してきています。

永遠のライバルである北京大学と清華大学。
両大学が競い合ってたくさんの優秀な人材を輩出し、
より良い中国を創るために切磋琢磨してくれたら良いな、
と思います。


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2011年5月20日(金)

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