第1366回
「時間はあるがカネはない」

北京で生活していると
「時間はいくらでもあるが、カネはない」という人たちが
たくさんいることに気付きます。

彼らは「いかにおカネをかけずに
楽しく有意義な時間を過ごすか」ということについては、
天才的な能力を発揮します。

例えば、私が徒歩通勤の途中で横切る大きな公園。
そこでは、様々な形で
おカネをかけずに楽しんでいる人たちを見かけます。

手を叩きながら歩いている人、
脚をひたすら拳で叩いている人、
背中を樹に打ち付けている人、などなど。
これらは全て血の巡りや気の通りを良くする、
カネのかからない健康法です。
ジョギングやバドミントン、
麻雀やトランプを楽しんでいる人たちもいます。

また、当社のオフィスの近くには
ショップやレストランが数多く入っている
大規模な複合施設があるのですが、
ここでもよく見ていると
90%以上の人たちはモノを買っていません。
散歩がてら、無料の
ウインドーショッピングを楽しんでいます。

その他にも
音楽に合わせて集団で踊る人たち、
交通事故を見物する人たち、
ただただ座って夕涼みをする人たち、などなど、
みなさんそれぞれの方法で
おカネをかけずに人生を楽しんでいます。

こうしたみなさんを見ていると
「人間、カネがなくても結構楽しく生きていける」
ということがわかるのですが、
モノやサービスを売る立場から見ると、
こうした国民の大多数を占める
「時間はあるがカネはない」人たちの
財布の紐を緩めさせるのは至難の技です。

特に最近はインフレにより、
買い物をしていても実感できるぐらいに
物価が上がってきていますので、
「時間はあるがカネはない」族の財布の紐は
きつく締まる一方です。

日本での報道を見ていると、
中国人富裕層の豪快なおカネの使いっぷりばかりが
強調されていますが、
中国の最も大きな潜在マーケットは、
国民の大多数を占める、
この「時間はあるがカネはない」人たちなのです。





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2011年7月8日(金)

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