第1379回
民主化すれば中国の腐敗はなくなるのか?

非常に激しい中国の共産党員の腐敗ですが、
では、この腐敗は中国共産党を排除して、
中国を民主化すれば全て解決するのでしょうか?

結論から言うと、私はそうは思いません。

確かに、中国を民主化して、
徹底的に腐敗を排除するような法律を制定し、
役人の全ての行動をガラス張りにして
国民の監視下に置くようなシステムにすれば、
みんな一蓮托生のグルである中国共産党の隠蔽体質により
様々な腐敗が握りつぶされている現状よりは
ずっと良くなるかもしれません。

実際、数年前、中国がネット民主主義国家になってからは、
5億人に近い網民(わんみん、ネット市民)の監視により、
従来ならば中国共産党内で握りつぶされていた事件が
次々と明るみに出るようになり、
中国共産党中央も処分せざるを得なくなる、
というケースがたくさん出てきました。

しかし、役人に権限を与え続ける限り、
民主化しようが何をしようが中国から腐敗はなくならない、
というのが私の意見です。

中国の官僚制の歴史は汚職の歴史です。
中国の役人は無給又は薄給であったために、
自らに与えられた権限を当然のように
汚職によって現金化して生活をしていました。

この伝統は現在に至るまで受け継がれ、
一部の役人は「為人民服務」がスローガンの
中国共産党の党員であるにも関わらず、
当然のように汚職を行い、
中国共産党の評判を著しく損ねているように思います。
彼らに言わせれば
「権限はあっても、給料は少ない。
ならば、権限を現金化して少ない給料を補うのは当たり前」
ということなのでしょう。

となると、中国が民主化したとしても、
民主化後にできた民主政府が
役人に権限を与え続ければ、
民主化最大の目的であった腐敗撲滅が
達成されない可能性も大いにあります。

現在は全ての官僚組織に共産党組織が併設され、
省長や市長よりも党委書記がエラいことからもわかる通り、
共産党組織の方が上位にあって
役人の実務組織をコントロールするシステムになっています。
もし、中国が民主化してこの共産党組織というたがが外れれば、
新政府の無力を見切った役人が好き勝手をし始め、
中国の腐敗は共産党時代より更に悪化する、
という事態に陥る可能性もなきにしもあらずです。

中国から腐敗をなくすには、
最終的には役人の権限を全て剥奪し、
国の運営をマーケットの需給に任せる
スモールガバメントを実現するしかないと思います。
しかし、今の中国でそんなことをしたら、
ヤクザより怖い中国共産党という結界によって
今までおとなしくしていた悪霊たちが暴れ始め、
中国が混乱のどん底に落ちていってしまうのは
火を見るより明らかです。

中国共産党が強権によって
官僚組織を徹底的に浄化すること。
これが現状、中国から腐敗を減らして、
国内情勢を安定させる
唯一の方法なのではないかと私は思います。


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2011年8月8日(月)

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