第1433回
IMFラガルド専務理事が微博開始!

先月、IMF(国際通貨基金)の
クリスティーヌ・ラガルド専務理事が、
自身の北京訪問に合わせて、
中国のポータルサイト「新浪網」が運営する
マイクロブログ「新浪微博(しんらんうぇいぼー)」に
アカウントを開設しました。

ラガルド氏の微博(※1)は、
開設と同時に大人気を博し、アカウント開設後2日間で
7万人を超える粉絲(ふぇんすー、フォロワー)を獲得、
「微博開設歓迎!」、「中国とIMFとの相互理解に役立つ」
といった好意的な書き込みが相次いでいるそうです。

中国は今や世界最大の外貨保有国。
IMFは事あるごとに中国の協力を仰がざるを得ない立場にあり、
先月の訪中では中国政府に対して
信用不安が深刻化する欧州への支援を要請したと見られています。

しかし、まだまだ貧しい人がたくさんいる
発展途上国・中国が、
自分たちよりずっと豊かな暮らしをしている
欧州の先進国を支援することには、
中国国内で根強い批判があります。
今回のラガルド専務理事の微博開始は、
中国国民のIMFに対する親近感を高め、
支援に対する理解を深めてもらう、
という狙いがあるものと見られています。

中国の網民(わんみん、ネット市民)は5億人を突破。
内、微博の利用者は2億5,000万人に達しており、
中国の世論形成に絶大な影響力を発揮しています。
その絶大な影響力を最も恐れているのは中国政府であり、
最近の中国は、微博で形成された世論によって
国の政策が変わるという
「ネット民主主義国家」になりつつあります。

以前の中国では、
中国共産党が全てを決めてそれを国民に従わせる、
というやり方で政治が行われてきました。
しかし、国民が豊かになって権利意識が高くなってきたこと、
インターネットの普及により
国民に横のつながりができてきたこと、などから、
今では従来のやり方が通用しなくなり、
独裁政党・中国共産党も5億人の網民の声を
無視することはできなくなっています。

今回のラガルド専務理事の微博開始も
「中国政府の支援を取り付けるためには、
まずは5億人の網民を味方に付けることが必要」
という判断からなされたものでしょう。
「将を射んと欲すれば、まず馬を射よ」。
IMFには中国の事情がよく分かっている
優秀なスタッフがいるようです。

この微博の絶大な影響力はもちろん日本政府も認識しており、
北京の日本大使館は今年2月、
「新浪微博」にアカウントを開設して、
日本関係の情報を発信しています。

この「日本国駐華大使館的微博」(※2)も、
既に10万人以上の粉絲を得ていますが、
欲を言えばこれに加えてラガルド専務理事のように
大使個人の「丹羽宇一郎的微博」を
開設してはいかがかと思います。

丹羽大使ご自身が日本の立場や考え方を
この「顔が見える」微博を使って
中国の網民に対してつぶやけば、
粉絲の数は飛躍的に伸び、
中国政府が網民の意見に配慮して、
日本に対して必要以上に強硬な姿勢を
取らざるを得ないような事態が発生することも
減るのではないでしょうか。


※1 http://weibo.com/christinelagarde

※2 http://weibo.com/japanembassy





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2011年12月12日(月)

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