第1434回
中国不動産業界に「冬」到来

中国政府の不動産価格抑制政策の継続により
下落を続ける中国の不動産価格。

不動産価格下落の影響を
最も強烈に受けているのは不動産開発業者です。
彼らは既に建ててしまったマンションの
値引き販売を始めていますが、
それでも資金繰りが付かなくなった会社が、
今後、体力のないところから
バタバタと倒れていくことが予想されます。

また、銀行や親兄弟から巨額の借金をして
投機目的でマンションを買った個人、
そうした個人や不動産開発業者におカネを貸している銀行、
財政の30%を土地の売却収入に頼っている地方政府などなど。
今まで「不動産価格は永遠に上がり続ける」という前提の下、
不動産バブルに踊っていた人たちは、
ことごとく人生設計の見直しを迫られることになります。

こうした厳しい状況は、
中国不動産開発業界の雄・万科企業においても同じです。

先日、万科企業の郁亮総裁は中国紙・南方都市報に対し
「中国不動産市場は現在「冬」に突入している」と語りました。
同社は既に「冬モード」の経営戦略に切り替えており、
具体的な対策としては
1.潤沢な現金の確保、
2.より積極的な販売、
3.より慎重な土地購入、
4.節約の強化、などをしているそうです。
そしてこの「冬モード」は
来年も続けることになるであろう、とのことです。

万科企業ほどの大企業でも
これだけの「冬モード」で経営をしていかなければ
生き残っていけないとなると、
これから寒さに耐えかねて息絶えてしまう
中小企業や個人が続出してもおかしくありません。
永遠に「夏」が続くと思って
何の備えもしてこなかったキリギリスは、
「冬」を越すことはできないのです。

ただ、この中国不動産業界の「冬」にしても
永遠に続くわけではありません。
郁亮総裁も現在の不動産価格の下落は
「合理的な水準に落ち着くまでの大きな流れの中にあるだけ」
との認識を示しています。

マンションが人の住む場所ではなく、
ライター石やカジノのチップのような
資産を表す記号として扱われ、
値上がりを狙った投機が横行していた
今までの状態が異常だったのです。
この不動産バブルが実需があるところまでしぼんでいき、
本当に住みたい人に手が届く価格まで落ち着けば、
この不動産業界の「冬」にも雪解けが訪れるでしょう。

落ち着いて考えてみれば、
国の経済が毎年10%前後しか成長していないのに、
不動産価格だけが毎年何十%も何百%も
値上がりを続けるわけがありません。
ただ、日本のバブル経済のときも同じですが、
シャボン玉の内側にいると
「不動産価格は永遠に上がり続ける」と
錯覚してしまうんですな。

そういった意味では、
今の中国不動産業界の「冬」は
中国経済の健全な発展のために、
必要不可欠な調整である、
と言えそうです。





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2011年12月14日(水)

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