第1484回
デマの書き込みでラオガイ送り

先日、中国のインターネット上に
河北省保定市の病院で新型肺炎(SARS)が発見された、
という書き込みがなされました。

これに対し、中国衛生省は検査の結果として、
当該患者の症状はSARSやインフルエンザではなく、
呼吸器官への細菌感染が原因であることが確認されたと発表、
症状も軽く、既に十分な対策が行われているとしました。

そして、保定市公安局は
ネット上に「SARS発見」のデマを流したとされる人物を
特定の上拘束、社会の治安を乱した罪で
労働教養2年の処罰を科したのだそうです。

労働教養(らおどんじゃおやん)。
これは「社会秩序を乱した」などの理由で
裁判なしで国民を悪名高き労働改造所、
通称・労改(らおがい)に送り、
強制労働をさせることができる制度です。
この制度を使えば、中国政府は気に入らない人を誰でも、
適当な理由を付けて、裁判などの面倒な手続きなしで
即刻、牢屋にぶち込むことができます。

今回、「SARS発見」の書き込みをした人も、
書き込みをしているときには、
まさか自分がラオガイ送りになるとは、
夢にも思わなかったのではないでしょうか。

政府の発表とネット上の書き込み。

この2者が違うことを言っている場合、
日本ならば多くの人が政府の発表の方を信じると思います。
しかし、中国では「政府の発表ほど信用できないものはない」
というのが常識であるため、
ネット上の書き込みの方を信用する人も多いと思います。

特に、中国政府には2003年に情報を隠蔽したことにより
SARSの大流行を招いてしまったという「前科」があります。
今回の件でも「SARS発見」は実はデマなどではなく、
真実の書き込みをした人は口封じのために
ラオガイ送りになったのではないか、
と思った中国の人たちも多いのではないでしょうか。
中国では政府の発表は全く信用されていないのです。

政府の無茶苦茶な行政を暴いたり、
腐敗役人を告発したりして、
中国の民主化に大きな役割を果たしている
ネット上の書き込み。

しかし、それは
「政府の発表よりネット上の書き込みの方が信用できる」
と思っている人が多いからこそ成せる技であり、
これが根拠のないいい加減な
デマの書き込みばかりになってしまえば、
ネットの信用性は地に落ち、中国の「ネット民主主義」は
大きく後退することになってしまうでしょう。

今、中国の民衆はインターネットのおかげで
横のつながりを持つことが可能になり、
その巨象のようなパワーを以って、
中国5000年の歴史の中で初めてとなる
民主主義国家を建設しようとしています。

そのための最重要ツールであるインターネットを、
信用のできない役立たずなものにしてしまわないためにも、
中国の5億人の網民(わんみん、ネット市民)1人1人には、
責任を持って事実の裏付けのある書き込みをすることが
求められているのです。





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2012年4月6日(金)

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