第1485回
農民工は労働者ではなく消費者だと思え

中国人的資源社会保障省の発表によれば、
昨年2011年、中国の農民工(のんみんごん、出稼ぎ労働者)の
平均月収は前年比21.2%増の2049元(2万6,600円)に達し、
初めて2000元を超えたのだそうです。

一方で昨年の大卒初任給は、
全国で最高の北京や上海でも3000元(3万9,000円)前後、
最低の黒龍江省ハルピンに至っては1500元(1万9,500円)と
農民工の平均賃金よりも低い水準に止まりました。

これは大卒者の増加に産業構造の高度化が追いついておらず、
肉体労働者は足りないのに、
頭脳労働者は就職超氷河期が続くという、
雇用のアンバランスが起きていることが原因です。
しかし、中国の大卒者は
「いくら賃金が高くても肉体労働者になってしまっては、
何のために大学で苦労して勉強してきたのかわからない」と考え、
頭脳労働に固執する人が多いため、
今後、この雇用のアンバランスは解消されないまま、
農民工と大卒者の賃金の逆転現象が起こる可能性も
大いにあります。

肉体労働者の賃金が毎年20%づつ上がっている今の中国。

こうした状況の中で、
中国でこれからビジネスを始めるとすれば、
肉体労働者を大量に雇用しなければいけないような仕事は
圧倒的に不利です。
人件費が毎年20%も上がってしまうと、
利益率の低い事業ならすぐに赤字になってしまいますし、
売手市場であることを知っている
肉体労働者の要求はどんどんエスカレートし、
労働争議が頻発するリスクも大きくなります。

これから中国でビジネスをするなら、
なるべく人を使わないで、
大きな付加価値を生み出せる仕事に限ると思います。

一方、毎年20%収入が増える農民工を消費者として考えると、
これは非常に魅力的です。

現在、中国の農民工総数は2億5000万人。
この農民工の平均月収は
昨年1年で360元(4,680円)増えていますので、
計算すると360元×12ヶ月×2億5000万人
=1兆800億元(14兆円)のマーケットが
新たに生まれていることになります。

もちろん、この昇給分の多くは、
不安定な将来のための貯蓄に回されてしまうのでしょうが、
仮に彼らが昇給分のほんの1/10しか
自らが豊かな生活をするための消費に使わなかったとしても、
マーケットに与えるインパクトは
かなりのものになるのではないかと思います。

今後、中国でビジネスをするにあたって、
農民工を労働者と捉えると、
人件費の上昇で悩むことになりそうですが、
消費者として見れば、
毎年20%ずつ上がる収入が逆に追い風となります。

農民工は労働者ではなく消費者だと思え。

これがこれからの中国ビジネスの
鉄則の1つとなるのではないでしょうか。





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2012年4月9日(月)

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