第1489回
20年後、物販の店舗はなくなる?!

私は今後20年もしたら
世の中から物販の店舗はなくなる、と見ています。

そしてもし、物販の店舗が残っていたとしても、
それはネット販売のお客さんのためにモノを実際に触ったり、
試着したりしてもらうためのショールーム的存在の店舗であり、
そこで売り上げを上げることを主目的としたものでは
なくなると思います。

これは既に
「デパートで試着したものを、ネットで安く買う」という
消費行動を取る消費者が現れていることからも予想ができます。
デパートは同じモノでも家賃や人件費が余計にかかる分、
ネット販売と価格競争をしたら、絶対に勝てないのです。

特に、物価に比べて不動産価格が異常に高く、
なお且つ、強欲な大家がたくさんいる中国では、
店舗販売は圧倒的に不利です。

以前、私の中国人の友人が
北京市内で洋服と雑貨のお店を開きました。

20uに満たない小さなお店ですが、
家賃は月5,000元(6万5,000円)。
そこで1着50元(650円)ほどの洋服を売りますので、
100着売れてようやく家賃が払える、という状態です。

しかし、1日に売れる洋服は多くても10着。
彼は「独立して
老板(らおばん、オーナー社長)になったのは良いが、
これでは月の半分以上を家賃を払うために
大家の奴隷として働いているようなものだ」
とこぼしていました。

また、最近の中国での人件費の高騰も
店舗販売には不利な要因です。

北京の街にはたくさんの洋服や雑貨のお店があるのですが、
注意して見ていると最近、
「導購(だおごう、ショップ店員)」を
募集しているお店が多くなっています。

せっかく独立して老板になったのに、
自分が1日中店番をしていては仕入れにも行けないし、
なにより格好がつかない。
そこで、店員を雇ってお店からの収入を
不労所得化しようとするのですが、
おりからの肉体労働者不足で
安い給料では誰も働いてくれない、
ということなのでしょう。

多分、今、北京のお店で「導購」を雇えば、
月に2000元(2万6,000円)は
払わなければならないと思います。
もし家賃を月5000元払っている彼が
月2000元の「導購」を雇えば、
それだけで月の固定費は7000元(9万1,000円)。
粗利率を50%とすると、
50元の洋服を最低でも1日10着以上売らないと
固定費もカバーできないという状況ですから、
彼のお店が黒字を出すのは至難の業であると言えます。

今から20年前と言えば1992年。
当時はまだインターネットもそれほど普及しておらず、
ネット販売など夢のまた夢でした。

20年後の2032年。
我が家の娘たちは、自分の子どもに
「お母さんが子どものころは、
洋服や雑貨はお店に行って買ってたのよ」
と話すのでしょうか。





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2012年4月18日(水)

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