第1490回
中国でネット販売が普及したワケ

私は中国でネット販売が始まった当初、
これほど中国でネット販売が
普及するとは思っていませんでした。
なぜなら、当時の中国では電気製品を買うのでも、
店頭で箱から出して電源を入れて、
きちんと動くか確認してから買うのが
当たり前だったからです。

ネット販売では、万一、製品が壊れていた場合、
生産者、販売者、物流業者、顧客のうちの
誰が壊したかがわからず、
4者が責任のなすりつけあいをする
泥仕合になってしまうと思ったのです。

予想が大ハズレしているので大変お恥ずかしいのですが、
ほんの6年前、私は
「第514回 中国では通用しないであろうサービス」でネット販売を
中国では通用しないであろうサービスの筆頭に挙げてしまっています。
私に先見の明がないということもあるのですが、
当時の常識から考えると、
中国でネット販売が普及するなどとは
とても思えなかったのです。

しかし、その考え方が180度変わったのは2010年。
家電ネット販売の「京東商城」が、
年率300%のモーレツな勢いで売り上げを伸ばし、
実店舗で家電を販売してきた
家電量販大手の「蘇寧電器」と「国美電器」が
あわててネット販売を始めたのを知ったときでした。
このニュースを聞いたときには、
「中国の人たちも動作確認をしないで家電を買うんだ」
とたいへん驚いた覚えがあります。

電気製品に限らず、
中国でのネット販売がこれだけ普及してきた背景には、
動作確認を必要としないぐらい中国製品の品質が向上してきた、
ということもあると思います。
また、他の消費者のお店の対応に対する評価や、
商品に対するコメントを見られるコメント欄、
荷物を受け取ってから問題がないか確認するまで
お店側におカネが支払われない
支付宝(じふばお、アリペイ)のシステム、
どんな理由であっても7日間以内ならば自由に返品できる
7日間無条件返品制度など、
ネット販売会社が様々な消費者を保護するシステムを
導入したことも大きいと思います。

更に、上海から北京で1個10元(130円)、
深センから北京で1個15元(195円)前後と、
値段が非常に安いにも関わらず、
意外ときちんと届く中国の宅配便の貢献も大きいと思います。
現在、中国の宅配便業界は業界再編の真っ只中にありますが、
今後、買収合併などによる大手の出現や、
ネット販売会社による子会社化などにより、
更なるサービスと確実性の向上が
図られることが予想されます。

まだまだ黎明期の中国のネット販売。
しかし、今後も様々な従来の常識を覆して発展を続け、
実店舗に取って代わる日が来るのも
近いのではないかと私は思います。


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2012年4月20日(金)

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