第1496回
ろう人形にだまされた60万人

先日、広東省深セン市で、
香港の曽蔭権行政長官や有名実業家・李嘉誠氏の
ろう人形と撮影した写真を宣伝に使うなどして
金銭をだまし取ったとして、6人の男が起訴されました。

6人は「香港ABM」と名乗る会社の関係者で、
「マイクール」という電話ソフトを使えば、
自分でかける長距離電話が安くなるほか、
支線を引けばその使用者から
使用料金を得られるなどと宣伝して会員を募り、
60万人から30億元(400億円)の資金を集めました。

同社の責任者は香港のマダム・タッソーろう人形館で
曽長官や李嘉誠氏のろう人形と写真を撮影、
本人と一緒に撮ったと偽って宣伝に使用し、
顧客には「曽長官のお墨付きを得ている」とか、
「李嘉誠氏の息子も出資している」などと
説明していたのだそうです。

しかし、その後、同社は突然他社との合併を発表し
音信不通になりました。
深セン市の会員が驚いて同社の香港オフィスを訪れましたが、
既にもぬけの殻。
調べたところ、「香港ABM」という会社自体が
香港では登記されていなかったことが判明しました。

典型的な投資詐欺事件ですが、
驚いたのはろう人形と一緒に写った写真を
60万人もの人が信用して同社にだまされたことです。
これだけ画像合成技術が進んでいる現代において、
「ろう人形と一緒に写真を撮る」という
超アナログな方法を選んだ同社の責任者も
その神経を疑いたくなりますが、
それにだまされておカネを出してしまう
被害者の人たちもどうかと思います。

私は中国政府のお膝元・北京に住んでいるせいか、
政府高官の「老朋友(らおぽんよう、古くからの友人)」
と自称する人にたくさん会ってきました。

本人は「オレの人脈はすごいだろう」と
自慢しているのだと思うのですが、
私は逆に、そういう人に会うと、
即座に「この人怪しい」と思ってしまいます。
見せてもらった写真に写っているのがろう人形ではなく、
仮にホンモノの政府高官と
一緒に撮った写真であったとしても、です。

私なら曽長官や李嘉誠氏と一緒に写った写真を見せられたら、
出資するどころか、
その人とはなるべく付き合わないようにします。
私個人的にはこれが普通の感覚だと思うのですが、
今回だまされた60万人の人たちはどう思っているのでしょうか。





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2012年5月4日(金)

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