第1497回
古月がカップ麺をひっくり返す!?

「トマトの厚くない人がいなくなって、
テレタビーズが勢いを増しているな」

「古月が迷彩服を着て、
カップ麺をひっくり返しそうだな」

何のことだかわけがわからないと思いますが、
これらは、今、中国のネット上において、
網民(わんみん、ネット市民)の間で
交わされている会話です。

トマトは中国語で西紅柿(しーほんしー)。
西にある走紅(ぞうほん、毛沢東回帰)の
市(しー)ということで重慶市を指します。
厚くないは中国語で不厚(ぶほう)。
厚くない、すなわち薄い、ということで、
薄熙来元党委書記を意味しています。
そして、テレタビーズはイギリスBBCの幼児番組なのですが、
中国語名は天線宝宝(てぃえんしぇんばおばお)。
これは温家宝首相のことです。

この文章は翻訳すると
「重慶市の薄熙来元党委書記がいなくなって、
温家宝首相が勢いを増しているな」
という意味になります。

もう1つの文章。
古月は胡錦濤国家主席の苗字・胡を2文字に分解したもの。
迷彩服はそのまま人民解放軍のこと。
そして、中国でカップ麺と言えば、
最も有名なブランドは康師傅(かんしふ)、
そこから転じて中央政治局常務委員会のメンバー、
周永康・中央政法委員会書記を指します。

この文章は
「胡錦濤国家主席は人民解放軍を味方につけて、
周永康・中央政法委員会書記を失脚させようとしているな」
ということです。

中国では今年秋に行われる
5年に1度の中国共産党全国代表大会(党大会)で、
政権交代が行われようとしていますが、それに先立って、
党内では熾烈な権力闘争が行われていると言われています。
網民たちはそうした権力闘争の行方を
ネット上で噂しあっているのですが、
党内権力闘争の存在自体を否定している中国共産党は
ネット上の言論統制を強化、
今年3月の「春風行動」と称する
違法ネット取り締まりキャンペーンでは
1065人を逮捕しました。

これで網民たちは言論統制を怖がって
発言をしなくなるのかと思いきや、
そこは「上に政策あれば、下に対策あり」の国、
上記のような網民の間だけで通じる隠語を使って、
発信をし続けているのでした。

なんともたくましい中国の網民。

中国共産党が古月やカップ麺を
ネット上の新たなNGワードに指定して、
そうした単語を含む発言を削除し始めたとしても、
網民たちは、また新しい隠語を発明して、
発信を続けるのでしょう。

これだけインターネットが普及した現代において、
言論を統制することはもはや事実上不可能です。
中国共産党は言論統制などというムダなことに
費やす労力があったら、
国民に知られても恥ずかしくない政治をすることに
精力を注ぎ込むべきなのではないかと思います。





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2012年5月7日(月)

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