第1498回
中国共産党の椅子取りゲーム

今年秋の中国共産党全国代表大会(党大会)で
政権交代が行われる中国。

日本では新たに党総書記に就任し、
来年の全国人民代表大会(全人代)で
次期国家主席になるであろう習近平氏が
どんな人物であるのか、ということに
話題が集中しているようですが、
今の中国の政治体制を考えると、
習近平氏がどのような考え方を持っているか、ということは、
それほど中国の政治経済や外交に
大きな影響を及ぼすことはないのではないかと思います。

国家主席が絶対的権力を持つ独裁者であった
毛主席の時代ならともかく、今の中国は既に、
中国共産党中央政治局常務委員会メンバーの9人が、
合議により政策を決定する集団統治体制に移行していますので、
国家主席の鶴の一声で何かが決まる、ということはありません。
逆に言えば、常務委員会のたった9人のメンバーが、
中国の行く末を決めていると言っても過言ではありません。

このため、中国共産党党員のキャリアアップの最終目標は、
この常務委員会の9人のメンバーの1人に
選ばれることになっています。
この9つの椅子をめぐって、今、中国共産党党内では、
熾烈な権力闘争が繰り広げられていると言われています。

ちなみに現政権の9人の常務委員会メンバーは下記の通りです。
1.胡錦濤 党総書記、国家主席、党中央軍事委員会主席
2.呉邦国 
全国人民代表大会常務委員長
3.温家宝 
国務院総理
4.賈慶林 
中国人民政治協商会議全国委員会主席
5.李長春 
党中央精神文明建設指導委員会主席
6.習近平 
党中央書記処第一書記、国家副主席、
       
党中央軍事委員会副主席
7.李克強 
国務院常務副総理
8.賀国強 
党中央規律検査委員会書記
9.周永康
 党中央政法委員会書記

中国共産党中央政治局委員は70歳が定年ですので、
今年のメンバー入れ替えで残るのは、
序列第6位の習近平氏と第7位の李克強氏だけとなります。

となると残る椅子は7つ。
この7つの椅子をその下の16人の政治局委員が競うのですが、
政治局委員70歳定年制を適用すると、
16人中7人が今年の党大会で引退することになります。

残る9人は王岐山、劉雲山、劉延東、李源潮、汪洋、
張高麗、張徳江、俞正声、薄熙来の各氏だったのですが、
薄熙来氏は既に政治局委員を解任され失脚、
張徳江氏も副首相だったのにも関わらず、新たに、
薄熙来氏の後任の重慶市党委書記と兼務になったことを考えると、
半年後の常務委員会入りは難しいのではないかと思われます。

そうすると、常識的に考えれば
この2人を除いた7人の若手政治局委員が、
常務委員会の残りの7つの椅子を分け合うことになりますが、
秋の党大会までまだ約半年あり、
まだまだこれから何が起こるかはわかりません。

中国の未来を決める9つの椅子を奪い合う、
中国共産党の椅子取りゲーム。
しばらくはこのゲームから目が離せなくなりそうです。





←前回記事へ

2012年5月9日(水)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ