第1534
10年前の中国と今の中国は違う

「日本人と中国人の常識や価値観は違う」と言っても、
その違いは未来永劫変わらない固定化されたものではなく、
時代と共に変化していくものです。

現に10年前には頻繁におつりを投げ返されて、
その度に腹を立てていた私も、
今ではおつりを投げ返されること自体がほとんどなくなりました。
私が中国の人たちの常識に慣れる前に、
中国の人たちの常識の方が変化したのです。

これは中国でビジネスをする場合でも同じです。

10年前の中国ビジネスの指南書には、
必ずと言っていいほど
「中国ビジネスは宴会ですべてが決まる。
白酒(ばいじょう)で取引先と何度も干杯(かんぺい)をして、
良好な人間関係を築くと共に、
酔っ払っても信用できる人間であることを
証明しなければいけないが、
飲みすぎて酔いつぶれる人は見下される」
と書いてあったものです。

かく言う私も、石炭の仕事をしていたときには、
中国の石炭会社の人たちと
白酒を死ぬほど飲み交わすのが重要な仕事の1つでした。
「こんな調子で毎回死ぬほど白酒を飲んでいたら、
文字通り本当に早死にしてしまう」と思ったものです。

しかし、時代は変わりました。
今でも内陸部や一部の業界では、
10年前の指南書がそのまま使える場合もありますが、
この10年で白酒は
@ 飲みすぎると健康に悪い、
A 貴重な食糧を浪費する、
B 汚職の重要なツールとして使われる、
などの理由から敬遠される傾向が続き、
今や北京や上海など沿海部で宴会に呼ばれると、
出てくるお酒のほとんどは白ではなく赤、
つまり紅酒(ほんじょう、赤ワイン)に
なってしまいました。

また、中国の消費者の常識も変わっています。

@ 食べ物としてのランクが低い麺だけの食事で
  中国の人たちが満足するわけがないので、
  中国では日本のラーメンは流行らない。
A 現物を見て動作確認をしなければ
  中国の人たちはモノを買わないので、
  中国ではネット販売は普及しない。
B 中国ではおカネを払わない人が多いので、
  中国ではクレジットカードのビジネスモデルは
  成り立たない。

これらは私が
10年前に考えていた中国市場に関する予想ですが、
今から振り返ってみると、
結果的にすべて大ハズレとなっているのは、
みなさんもご存知の通りです。

中国の人たちの常識や価値観は日々変化しています。
私たち日本人が中国の人たちの
常識や価値観を本当に理解するためには、
昔の固定観念にとらわれず、
常に新しい情報を仕入れて、
たゆまぬ更新を行っていかなければならないのです。


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2012年8月3日(金)

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