第1535回
顧客企業という落とし穴

私が中国で起業して10年が経ちましたが、
この10年間、たくさんの落とし穴に落ちてきました。

中国ビジネスの落とし穴は
日本とは違うところに掘られている、
ということは頭では十分にわかっているはずなのですが、
それでも気が付くと落とし穴に落ちていた、
ということがよくありました。

1つ目の落とし穴は、顧客企業という落とし穴です。

日本では契約を結ぶまでは大変ですが、
一旦契約を結んでしまえば、
後は契約書の条件に従って淡々と納品、決済を行うだけです。
しかし、中国では契約を結んでからも戦いは続きます。

よく言われるのは、中国企業の支払いの悪さですが、
私もこの落とし穴にまんまとはまってしまいました。

当時、当社の引越子会社・外運華通の業績は非常に好調で、
新規の顧客をどんどん開拓していました。
しかし、業績は好調で帳簿上は黒字が出ているのに、
資金繰りがいつまで経っても楽にならないのです。

不思議に思って外運華通の財務内容を調べてみたところ、
案の定、未収売掛金が200万元(2500万円)以上と、
会社の規模にしては異常に大きな数字に膨らんでおり、
うち、最大の顧客に対しては
1社で100万元(1250万円)以上のおカネを
払ってもらっていませんでした。

このままでは黒字倒産してしまう、と思い、
早速、その最大の顧客に電話をかけて
売掛金を早く払ってくれるようにお願いしたのですが、
「財務担当者が出張中」とか、
「払いたいが今はカネがない」などの理由で
のらりくらりとかわされてしまいます。

そこで、同社に乗り込み同社の社長と直談判で
売掛金返済の交渉を開始。
長い交渉の結果、何とか分割払いで売掛金を返してもらう
返済スケジュールを確定したのですが、
翌月以降、同社からのオーダーは
一切来なくなってしまいました。
きっと、期日通りにおカネを払わなくても
引越作業をしてくれる別の会社を見つけたのでしょう。

最大の顧客を失って、外運華通の売上高は激減しましたが、
それでも、売掛金を返してもらう方を選んでよかったと
今では思っています。
もし、あのままずるずると同社と付き合いを続けていたら、
外運華通はおカネが回らなくなって
本当に黒字倒産してしまったかもしれません。

この事件から私が学んだのは
「たとえ売上高や利益が減るのだとしても、
おカネを払わない会社とは絶対に付き合ってはいけない」
ということです。

もし、どうしても売掛金を回収できない場合は、
自分の会社を見る目のなさを猛省した上ですっぱりと諦め、
きちんとおカネを払ってくれる新しいお客さんを
探した方がよいのではないか、と私は思います。


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2012年8月6日(月)

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