第1536回
取引先という落とし穴

前回は顧客企業という落とし穴についてお話しましたが、
理不尽なのはお客さんだけではありません。
中国ではこちらがおカネを払う立場のお客さんであっても、
取引先から理不尽な仕打ちを受けることがあります。

そこで今日は2つめの落とし穴、
取引先という落とし穴についてお話します。

当社は2008年に
東五環路の外側に8300uの土地と建物を借り、
貸倉庫業を始めました。
しかし、倉庫業を始めたとたんに開幕した
北京オリンピックの交通規制により、
北京の物流はマヒ状態になり、
当社の倉庫は開店休業状態が続きました。

ただ、その後、紙の会社や
家電ネット販売大手の京東商城などの顧客で
だんだんと倉庫のスペースが埋まっていき、
倉庫業開始から2年後、
2010年にようやく満室状態となりました。

さぁ、これから倉庫の改装でかかった100万元(1250万円)と
空室で損した100万元、合わせて200万元を取り戻すぞ、
と思った矢先に、土地と建物を借りている大家から、
契約書にはない値上げを要求され、
値上げを受け入れないなら出ていってくれ、と言われました。
たぶん、満室状態になったため、足下を見られたのでしょう。

当社は当初、契約書にはない値上げですので、
当然、値上げを拒否していました。
しかし、大家は諦めず、
何度も何度も値上げの通知をしてきました。
そして、何度目かの拒否をした次の日に、
役人が当社の倉庫に現れ、
いろいろと難癖を付けた挙句に、
巨額の罰金を言い渡して帰っていきました。

大家の値上げ要求と役人の難癖は、
偶然重なっただけなのかもしれませんが、
倉庫があるのは北京の中でも田舎の地域。
中国では田舎では、役人も企業オーナーも警察もヤクザも
みんなグルであることが多いですので、
この完全アウェイの状態では、
放火や不法行為など次に何をされるかわからない、
という恐怖を感じました。

そこで、当社は大家の理不尽な要求に屈するようで
大変悔しかったのですが、大家が倉庫業を続けて、
倉庫を借りてくれているお客さんに迷惑をかけない、
という条件ですずめの涙ほどの違約金をもらって
倉庫業から撤退しました。

私がこの事件で学んだのは
「@ 都会で、A信頼できる人から紹介された、B会社、
と取引すべきである」ということです。
田舎は役人も警察もヤクザもみんなグルですし、
中国の人たちは誰の紹介もなく飛び込みで来た、
いわゆる外人(わいれん、身内以外の人)には
とことん残酷です。
そして、会社組織ではない個人の大家は強欲で
理不尽なことが多いからです。

倉庫は市街地にあるものではありませんので、
@ は仕方がないかもしれませんが、今から思えば、
A 信頼できる人から紹介された、B会社との契約であれば、
もしかしたら、結果は違っていたかもしれないなぁ、
と思いました。


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2012年8月8日(水)

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