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18. 従業員を初めて雇う

さて、理念や価値観がどうであろうと、
事業というのは現実に物事を一歩一歩前に進めていかなければ始まりません。
事業のおおまかなコンセプトが決まり、市場をある程度理解したところで、
組織をつくりはじめることにしました。
従業員を雇うのです。

従業員といってもどこから手をつけるのか、それをまず考えました。
最初は人事でした。
私の代わりに優秀な人を雇ってくれる人がいれば私の負担が減るからです。
初めての新聞広告を出しました。
その新聞記事は今でもとってあります。
人事を採用するのにさして大きな障害はなく、すんなりと決まりました。
そして、次は店の柱となる店長と調理長でした。

店長と調理長の選定は困難を極めました。
私自身が百人以上を直接面接しました。
それでもなかなかこれと思う人材にはあたりませんでした。

人材を採用するには、採用基準が必要です。
わが社ではその採用基準を以下のように定めました。

基本は3つの要素「心・技・体」です。
そして、3要素ごとにさらに詳細化しました。
心=「誠実さ」×「挑戦心・向上心」×「一緒に働きたいと思えるか度」
技=「合理思考・学習能力」×「コミュニケーション能力」×「計数管理能力」
体=「笑顔」×「清潔感」×「健康」
この3×3の9要素の合計から店長と調理長の選定をはじめました。

実のところ、人材採用の最終的なツボは「こいつイイな。」という感覚だったりします。
また、私も評価シート上の項目よりもこういった感覚を重視しました。
とくに調理長の選定については、
「うまいものを作れる絶対的な能力」よりも
「会社規定のレシピに忠実な調理ができる能力。
そしてそれをベースにさらにおいしいものを作る創造性」を重視しました。

調理長の候補者には、特に実際の調理をしてもらうことを義務付けました。
事前にいくつかの条件をあたえました。
・ 当日当社指定(レシピ有り)の品を一品つくること
・ 一品は自分独自の料理を作ること
・ 原材料は50元以内で自分で用意すること。
・ 購入した原材料のレシートを持参し、清算すること
こんな簡単な条件であっても、50人を変える候補者が次々に落選していきました。
このテーマには、こんな目的があったのです。
1. 事前に条件を伝える。→人の言うことをちゃんと聞く。→コミュニケーション能力
2. 原材料の購入と清算→実務遂行能力
3. 実際の調理→調理能力、仕事の段取り力

驚くことに、事前にファックスしたレシピを持ってこなかったり、
原材料を買ってこなかったり、レシートを持ってこなかったりと、
正直、問題外の候補者が大部分でした。
さらに面白かったのは、仕事の段取りでした。

必要な材料を必要な分だけ切り分け事前に小分けにしておく。
そして、調味料は調味料でしっかりと整理必要に応じて効率よく仕事を進める。
調理人にとっては基本中の基本のはずなのに、こんなところに大きな差が出てきたのです。

実際、我々が指定した一品の味については、あまり重視しませんでした。
なぜなら手際さえいい人間であれば、
レシピの内容を詳細に教え込めば問題ないはずだからです。
むしろやっかいなのは、
自分の腕に自信があり、なんでも自分風にアレンジする調理人です。

一方、店長の面接はいわゆる私が想像した中国人らしい候補者がたくさんいました。
たとえば、履歴書に"英語が流暢"と書いてあるので、
まずは、中国語で「英語が話せるの?」と聞くと、自信満々で「Yes!」と英語で返事。
その後、急に英語に切り替えて質問をすると、
急に驚いたような顔をして、「アーハン、ンーフン。イャー、オーケー。」と、
何を聞いても相槌しか帰ってこない奇妙な英語を話す人間等、
まあ空虚な自己アピールの連続でした。

こうしてなんとか店長と調理人を選定しました。
小さなチームの出来上がりです。


2007年7月23日(月) <<前へ  次へ>>