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36. あっ、資金がない・・・

肝心要の新メニューの開発は難航しました。
1週間に何度も新メニュー開発会議を開いては試食を繰り返しました。

前にもお話したとおり「地元の人にうける味を開発せよ」がテーマですから、
四川風の味もどんどん出てきました。
ただし、やみくもに開発していたのでは、そのへんの中華料理の店になってしまいますので
焼肉の特色を活かしたメニューを考えていました。

驚いたことに、うちの調理人は私の厳しい要求に応え
次から次へと新しい料理を考え出していました。
1回目の試食時になるべく芽のあるものを選別し、
可能性のないものはばっさりと切り落としていきました。
1回目で満足のいく味のものは1品もありませんでした。
しかし、味に対する要求を明確に伝え2回、3回と作り直すと
おいしいものになっていきました。

こうした作業を週に3回も続けるうちに、私のおなかはどんどん大きくなっていきました。
そりゃそうですよね、
食べたくもないものを仕事の義務感でひたすら食べ続けるわけですから。
それでも私は食べ続けました。
そうやっておよそ1ヶ月過ぎるころには50を超える新商品が手元にはありました。
自分のウエストと引き換えに手に入れた新商品、ワクワクしました。

こういった努力を続ける毎日でしたが、ある日重大なことに気がつきました。

お金がなくなりそうなのです。

いわゆる資金ショートです。

今のペースでやっていくとおよそ2ヵ月後の月末には資金がなくなる。
費用項目、営業収入を一晩かけて何度もシミュレートしましたが、
どうやっても2ヶ月以上もたないことがわかりました。
正直いって、資金のショートが2ヶ月前にわかるなんて
経営者としては失格もいいところです。
しかし、当時必死に前を見て走り続けていた私は少し盲目的になっていたのでした。

資金ショートが目前に見え始めてからの私は、異様な焦燥感に襲われました。
何日も何日も悩み挙句の果てには従業員に
「社長、どうかしたんですか?最近顔色が悪いというか、いつもすごい形相ですよ。」
といわれる始末でした。

冷静に考えれば、お客さんが来ていない店が赤字なのは当然、
ましてや、事業開始直後。
資金繰りの困難はすべての経営者が経験する問題です。
しかし、私にとって、この事業は自分の人生を賭けるような気持ちではじめたものでした。
だから、資金のショートが異常に怖かったし、
正直に言うと「あっ、俺あかんわ。社長クビだ。」
とまで思っていたんです。

まさに自分の腹は太るが、(会社の)財布は細るという状況だったのです。


2007年11月26日(月) <<前へ  次へ>>