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46. 怒る技術

前回は、「中国人も結構なにわ節ですよ。」と話しをしましたが、
中国で人を創り上げる過程においては、
中国特有の問題、結局どこの国でもどんな人種でも同じ問題、
とさまざま種類の経験をします。
そんな中で、私が中国にきて一番最初にぶちあたった壁は
「人を怒れない。怒る技術がない。」
という問題でした。

日本にいるころは仕事やプライベートを含めて怒るということはほとんどありませんでした
(妻は首をかしげるでしょうが)。
しかし・・・中国にきてしばらくたつと、毎日怒っている自分に気づきました。
しかしそれはほとんど対外的、つまりおつきあいのある業者にむけられていました。
私にとって当初一番困難だったのは、自分の従業員を怒ることでした。
私の前職はどうもあまりにお行儀の良すぎた場所だったようで、
怒るという習慣をすっかりわすれていたのです。

ところが・・・。
従業員がお客さんの帰った後の個室の中で勝手に秋刀魚を焼いて食べたり、
仕事中に携帯で音楽を聴いたりと怒るネタには事欠きませんでした。

当時の自分を正直に分析すると、
「お互いに信頼感のあるよい組織をつくりたい。」
「みんな大人なんだから自分で問題に気づいて改善してほしい。」
そして、「人を怒るのは自分も気分が悪いし人に嫌われるので嫌だ。」
という気持ちがあったのだと思います。

私には、そんな経験をしながら自分なりに獲得した、
"怒るための3原則"というのがあります。

<<怒るための3原則>>



原則その1:「怒るには訳がいる」

人を怒る際にもっとも大切なのはその理由に合理性があるかどうかです。
これに欠けると、結局怒られた本人もいつまでも腹に落ちないために
結局しこりが残るのです。

原則その2:「心から激しく怒る」(でも怒るな叱れ)
人を怒る時、そのことをその人の心に染みわたらせる必要があります。
間違いを起こしている本人はたいて自分が間違っていることに気づいていません。
それゆえ、穏やかな怒り方や指摘をするだけでは十分でなく、
大きなショックを与える必要があります。
「え?そんなに悪いことしちゃったの?」と思わせなければなりません。
そのために激しい態度やあえて一番突き刺さるような言葉を選んで、
それこそ命がけでぶつける必要があります。
ただし、感情をむきだしにするのではなく、
あくまで冷静な判断としてそうする必要があります。

原則その3:「結果が悪いことに怒ってはいけない」
怒る時は当然ながら、何らかの好ましくない成果が見られた時です。
でも私は、結果が悪いことに対して怒るべきではないと堅く信じています。
少し説明しますと、

仕事の成果 = 仕事に対する考え方(価値観) × 能力 × 経験

これは京セラの稲盛さんの方程式ですが、私はこの考え方にとても賛成しています。
怒る時に大切なのは、成果が出なかった際、
その原因が能力や経験に起因している場合はけして怒ってはいけないのです。
能力や経験を伸ばすために冷静な指導やアドバイスが必要です。
ただし、仕事に対する考え方が甘かったり間違っている場合は別です。
この時こそ、思いっきり怒る必要があるのです。


総じて人を叱るというのは勇気がいるものです。
理由がしっかりとしていないといけない、中途半端な気持ちではいけない、
出口のない(解決策が見えない)怒り方をしてはいけない。
指導者として人を叱るのは、大変な技術としっかりとした心構えがいるものです。

怒るとは経営者に与えられた1つの義務であり責任であると私は考えています。


2008年2月4日(月) <<前へ  次へ>>