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83.ATMコーナーで寝る人
最近心に残った出来事がありました。
よく利用している銀行の24時間稼動のATMコーナーには
田舎から出てきたばかり風の若い人がよく寝ています。
割りとこぎれいな服装で、お金を恵んで欲しいという風でもなく、
ただ寝る場所がないようなのです。
思い切って「どうしてこんなところにいるの?」と聞きました。
「田舎の湖南省から出てきたんだけど、
今日も仕事が見つからず、お金を使い尽くしてしまって」と。
彼女の周りには、空いたペットボトルが集められていて、
回収業者に売ったとしてもせいぜい数元、
食事の足しにもなりそうにありません。
多くの人は、中国人の広い家族・親戚のネットワーク等を
あたってから上京するのですが、
この子はなんの頼りのないところにきて、
逞しく頑張っている姿に、応援したいと思い、
私は持ち合わせの小銭を差し出して
食事の足しにして、と言って別れました。

こうした田舎から出稼ぎに来た人は
「民工」(みんごん)と呼ばれていて、
男性であれば北京で開発中のビル建設や
道路建設などの肉体労働に従事し、
女性であればレストランのウェイトレスなどの
サービス業に従事します。
当然、労働環境の悪い仕事しか見つかりません。
そんな中で悪い環境で生活しているのですから、
例えばレストランで接することがあれば、
態度が悪いなと感じて悪印象が伴うことも多いのです。

私もマッサージ店の店長をしていたことがあり、
若くて田舎から出てきた人達と一緒に働いて来ましたが、
やる気という点では十分でした。
しかし、勉強や仕事などの
ある種のストレスがかかるところで
トレーニングされてきたことがない人が多かったので、
訓練にとても骨が折れたし、どうしようもない人もいました。
しかし、多くの民工にもATMで出会った彼女のように、
北京で稼いで両親や自分の暮らしを良くしたいという
初心があったと思います。
その純粋な気持ちから、立派に成長するのか、
それとも蔑まれるような人になるのか、
少なからず職場の環境に影響されるはずです。
わたしの職場にも若い人がいます。
彼女達が実家に帰ったときに
「よい職場で働いてきたんだね」と思われるよう、
よい職場にしたいと思っています。

<つづく>
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2009年8月21日

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