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17.蜂と旅する人たち
雲南では、日本よりひと足早く春が訪れます。
農場の周りは亜熱帯の花の香りが漂い、
穏やかな春風がそよいでいます。


風と一緒にどこからともなく現れるのが、養蜂家です。
彼らは毎年、ミャンマーの国境の近くから蜂箱を携え、
開花前線と共に北上して来ます。
そして2ヶ月間コーヒーの産地にテントを張ります。
コーヒーと混植しているマンゴーの花や、
ライチのような甘い香りの竜眼の花、コーヒーの純白の可憐な花々。
その間を働き蜂は休むことなく飛び交い花の蜜を集めます。

マンゴーと竜眼の蜂蜜は、
しっとりとして南国の果物独特の甘みの強い香りがします。

コーヒーの花から採れる蜂蜜は、さらさらしていて癖がなく、
ジャスミンの香りがします。
自社農園で収穫できる
酸味の少ないコーヒーとの相性がいい蜂蜜です。

午後の作業の休憩時間には屋外でお茶の時間を持ちます。
マンゴーとコーヒーの花の蜜が混ざった蜂蜜に
ミントの生葉を加え熱湯を注ぎアロマティーを入れます。
さわやかで芳醇な香りが口いっぱいに広がり至福の瞬間です。

コーヒーの花が終わる頃、養蜂家の目的地は二手に別れます。
一方は雲南の山岳地帯沿いに菜の花の花粉を集め、
その後韃靼蕎麦の花粉を求めて
何百キロも長距離を移動していきます。
もう一方は、コーヒーの産地にとどまりスモモの花粉を集めます。

コーヒー生産者にとって、
コーヒーの花を確実に受粉してくれる蜂達は、
農場にとって頼もしい存在です。
養蜂家は南国の遊牧民、大切なお客様です。

南国の花の蜜が凝縮された情緒あふれる蜂蜜を、
みなさんにも是非味わっていただきたいと思っています。


2010年3月31日(水)

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