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51.ノートに挟んだ10粒の種
2008年の4月に邱公館雲南で勤務を始めてから、
農場や加工管理業務の傍ら作物の試験栽培を行っています。
コーヒーの発芽試験、苗作り、剪定方法の確立、新種の野菜栽培、
土壌改良試験など、邱公館の技術力を上げるために日々、
コーヒー以外の作物とも向き合ってきました。

緑肥作物を導入した反復試験を重ねてきた結果、
土壌改良と肥料効果が確認されました。
今後本格的に、邱公館の新しい技術として
農場内に導入していくところです。

緑肥作物は有機農業を実践する上で欠かせません。
緑肥は土壌改良効果があり、
高品質で安定した生産ができるようになります。
緑肥を畑にすきこむ事で土壌中の腐食率が高くなり、
ふかふかした土つまり、団粒構造がしっかりしている土になります。
土壌の通気性や透水性、保水性が改善され、
植物の根張りがよくなり、
干ばつの被害を受けにくくなる効果も期待できます。

コーヒーの木以外の作物を一緒に植えることで、
土の中の微生物相が多様化して
病原菌の繁殖を抑えることにも繋がります。
空気中の窒素を固定でき、
地中の窒素分を増加させる緑肥もあります。

緑肥作物になる植物はイネ科やマメ科の作物で
品種線虫防御・除塩・防風・窒素固定・硬盤打破などにより
有効性が違います。

今回の私達の目的は「窒素固定」「硬盤打破」です。
物価高騰にあわせ肥料も値段が上がっています。
また重い有機肥料の施肥作業を少しでも軽減できるように
空気中の窒素を土壌内に取り組みます。
粘土質の農園の土壌に緑肥をすきこみ、
団粒構造を発達させ微生物を増やします。
硬い土壌でも1mの根を張ることができる品種を選びました。

雲南で手に入る緑肥作物の種子をいろいろ試してみたのですが、
作付け時期や草丈がコーヒーと合わずに適用できませんでした。

そんな失敗続きの毎日に悩んでいた時、
ドミニカ共和国で仕事中に使っていた
ぼろぼろになった手書きの分厚いノートを読み直してみたのです。
すると緑肥作物の記録に
セロハンテープで10粒の種が記録として貼ってありました。
保存状態もいいわけではなく、
4年も経過していたので発芽するか定かではありません。
しかし藁をも掴む気持ちで10粒の種をまいてみたのです。
そんな心配はよそに元気に発芽したその植物は
雲南の気候に適応しました。

ドミニカ共和国では背丈1mまで成長していた植物は、
雲南の気候ではコーヒーとの混植にぴったりの
50cm~70cmで育ちます。
種を採取しては試験結果を見ながら
好ましい背丈ができる種子を増やしていき、8kgになりました。
黄色い花が咲くこのマメ科の植物、
邱公館の農園の秘密兵器になっていくことでしょう。


2010年12月1日(水)

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