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3. 先輩方の足跡

私がイタリアで最初に働いた場所は、
中部イタリアマルケ州アンコーナという港町から10分ほど海沿いを車で走らせた場所で
アドリア海に面したポルトノーヴォという所です。ホテルも隣接する海水浴場でした。
レストランの名前は、IL・LAGHETTO(イル・ラゲット)。
池、水たまりという意味です。
名前の由来を尋ねると、レストランの裏手に池がある、
ただそれだけだと聞きがっかりしたことを今でも覚えています。

私がイル・ラゲットに行ったのが6月頃でシーズン前ではあるけど
それはとてつもなく忙しく、テラスを入れると客席数150席。
そこでナポリ出身の彼と二人でプリモピアットを任されました。
プリモピアットとはいわゆる第二のお皿という意味で
スープ、パスタ、リゾットなどを作るポジションです。
日本で全てのポジションを経験してきたし自信はあったけど、
入っていきなりその重要な場所をさせてくれるのかと疑問に思うと、
このレストランでは日本人はまずプリモピアットを任されるのだと聞いて
さらに疑問は深まるばかりでした。
なぜなのだろうか???

答えは簡単です。それは先人の方々つまり先輩方の頑張りによるものだと。
イタリアでは日本人はとても信頼されています。
わがままは言わない、時間には正確、我慢強くそしてお金持ちといったように、
几帳面な職人気質を理解しているからです。
最後のお金持ちというのは勘違いしていると思いますが、
先輩方がイタリアできっちりと積み重ねてきたものがここにはあるのだと。
後に来るであろう後輩達の為に、であるかは分かりませんが
日本人ポストという土台がしっかりと出来上がっていました。

その期待に応えるべく、ではありませんが
自分のやってきた仕事がこんなにも早く、
試せるのかと心躍りました。
そして、イル・ラゲットのオーナーが「アイ パウーラ?」と一言、
辞書をめくり意味を調べると(怖い?)と書いてあり、
その質問に私は「Non c'e`problema!」(問題ない!)と
声を大にして応えたことが記憶に残っています。


2007年4月4日 <<前へ  次へ>>