Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第25回
「密入国者の手記」が「大衆文芸」誌に掲載されることになりました

徹夜して一気に書いた小説「密入国者の手記」を
どこかの雑誌に、掲載してもらうことが必要になりました。
そこで思い出したのが、台湾の台北高校時代に
文学のことでお世話になった西川満さんです。
西川さんは台湾から引き揚げ、東京の阿佐ヶ谷に住み、
『キング』や『講談倶楽部』といった大衆小説に寄稿していました。

邱さんは書いたばかりの原稿をもって
西川さんの自宅を訪ね、事の由来を話し、
「どこか掲載してもらえそうな雑誌はないでしょうか」
と頼みました。
西川さんは
「商業雑誌に載せてもらうのはそう簡単にはいかないけれど、
 自分は長谷川伸先生の新鷹会という小説研究会に所属している。
 月に一回、研究会があるから、そこへ行ってあなたの代わりに
 朗読してあげましょう」
と引き受けてくれました。
長谷川伸先生とは「一本刀土俵入り」とか「沓掛時次郎」
などで名の知られた股旅物の世界の大御所です。

西川さんに頼んで香港に帰った邱さんのもとに
西川さんからの手紙がおっかけて来ました。
「新鷹会に出席し、その場で『密入国者の手記』を読んだところ
 山岡荘八先生も村上元三先生も激賞された。
 君が手を入れたのかときかれたので、
 手は入れていないというと答えたら、びっくりして
 才能のある人だからガンバレといってほしい」
とのことです。

のちにNHK大河ドラマの原作者として私たちを楽しませてくださった
山岡荘八さんも村上元三さんも長谷川氏の門下生なのですね。
さてこうした大先達から激励されたという知らせは
この先どう生きていけばいいかと迷っていた邱さんにとって
大きな勇気づけになり
「ひょっとしたら小説家になれるかもしれない」
という気持を抱かせました。
邱さんはすぐさま、西川さんに礼状を書き、
ペンネームを何にしたらよいかと相談し、また
上等の原稿用紙を送ってほしいと頼みました。


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2002年9月21日(土)

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