Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第48回
小林秀雄さんの反対にもめげず、
「東洋の思想家たち」が世に出ました

創元社から出版を断られ、邱さんはどうしてだろうかと
頭をひねりましたが
評論家の小林秀雄さんが同社の顧問をしており、
この小林秀雄さんが反対して流れたと、のちになって知りました。
「小林秀雄さんは『孔子や荘子のような何千年もの淘汰に
耐えてきた古典を、邱さんのような青二才にそう簡単に
料理されてたまるか』といい」
(『邱飯店のメニュー』)
「私のとりあげたテーマを見て、
中身も読まずにフンと鼻であしらった」
(『中国の旅、食もまた楽し』)そうです。

そして小林秀雄さんは
「のちに私が株や金儲けの話を書いて話題になると
『あれはニセモノだと思っていたが、やっぱりそうだろうと
先見の明を誇られた」(『邱飯店のメニュー』)そうです。
「小林秀雄さんのような生き方をしてきた人にとっては、
経済と文学が理解できるということは到底理解できなかった
ことであろう」
(『邱飯店のメニュー』)と邱さんは感想を述べています。

小林秀雄さんといえば、文芸評論の世界で神様扱いされた人で、
今年は生誕100年にあたるとのことで、
記念して全集が出るようです。
こうした人の反対で創元社からの出版は流れましたが、
講談社が出版を承諾し、邱さんの34歳の冒険作、
『東洋の思想家』が『食は広州に在り』に勝るとも劣らぬ立派な
装幀で世に出ることになりました。
この『東洋の思想家』は講談社から出版されたのち、
徳間書店の『邱永漢自選集全10巻』にも、
また日本経済新聞社の全25巻の中にも
そしてQブックス五十巻の中にもその1冊として選ばれています。

出版されてから20数年たったところ邱さんは
「孔子や荘子や韓非子に対する私の解釈は20何年たった今日、
読み返しても訂正を要するとは思えない。
こうなると学問のレベルというより人生に対する流儀の違いだから
どちらが正しいと言い争っても仕方がない」
(『邱飯店のメニュー』)と
小林秀雄さんの対応についての感想を書きました。
そして最近も
「なるほど小林さんの見識を持ってすれば30過ぎの右も左も
わからない若造が何千年もの淘汰に耐えてきた古典を料理する
こと自体がおおそれたことに映った違いがない。
しかし、あれから四十年あまりたって、古稀の年齢をこえてから
私が読み返して見ても、
三十台に捉えたイメージとそんなに大きな違いがあるわけではない。
仮に年をとるとまた別の感想があるとしても、
若い時には若いなりの見方があっていいように思う」
(『中国の旅、食もまた楽し』)と書いています。


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2002年10月14日(月)

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