Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第106回
借金の上手な使い方をとりあげた『借金学入門』

昭和33年に邱さんは「オール読物」で連載していた
「キチガイ日本」で「借金のすすめ」と題し
「インフレになると不動産が高くなるので
借金をして建物を建てるとトクをする。
会社はすでにうまく借金をとりいれているから
サラリーマンも会社のまねをして
借金してマイホームを建てるのがいい」という
趣旨のことを書きました。

邱さんは自分でもそれを実行に移し、
その体験にもとづいて昭和43年に
借金の効用について「借金学入門」という
経済評論を書き、その3年前から書いてきた
金銭、経済、税金などの作品とあわせ、
同名の『借金学入門』を出版しました。
「借金のすすめ」を書いてからちょうど
10年たってからのことです。

このなかで邱さんは書いています。
「今、10年前の自分の文章を読みかえしてみて、
天下の大勢に対する認識が
たいして間違っていなかったなあと改めて思う。
あのころ、私は文明批評家的な立場から
自分の感想を述べたに過ぎなかったが、
もしあの私の一文を読んで会社なり銀行なりから
借りられるだけ借りて
自分の家を建てたサラリーマンがいたとしたら、
おそらく今ごろは借金は完全にかえしおわって
自分の名義の家を所有しているかたちになっているだろう。

現に私自身も『批判しているだけでは能がない』、
『思ったことは実行に移そう』という気になって、
それからまもなくして借金をしてビルを建てた。
この10年間に私はビルを3軒、木造の建物を3軒、
マンションの部屋を3軒、建てたり手に入れたりしたが、
いずれも銀行から金を借りた。
いつの間にかその借金もかえしおわって、
いまでは一番新しいビルの借金が
そっくりそのまま残っているだけである。
そうするとずいぶん金持ちになったことになるが、
チエをしぼって日夜努力してやった仕事が
さしたる収入をもたらさなくて、
借金して不動産を買った分だけが財産として残るようでは、
あまり健全な世の中とはいえないのではないだろうか。
しかし、実はこの事実が今日の社会の一面を
はっきり見せてくれているのである。」
(「借金学入門」/『借金学入門』に収録)

「借金のすすめ」が書かれた昭和33年頃はまだ
銀行ローンもできていなかったので、
邱さんの提言は世間の人からはよく理解されませんでしたが、
『借金学入門』が出版された頃にはローンが活用されはじめたので
この本はかなり反響を呼びました。


←前回記事へ

2002年12月11日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ