Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第109回
税金の倹約に役立つ『事業家・資産家のための節税の実際』

『ゼイキン報告』が大ヒットした邱さんは
「経営者会報」に「節税の実際」を連載し、
「事業家・資産家のための節税の実際」と題する
箱入りの本を刊行しました。

この作品は邱さんが節税のために知恵をしぼった体験にもとづき
高額の税金を払っている人々の実用に供すために執筆したもので
「女房をナンニモ専務にすることについて」とか
「家族会社をつくろう」といった提言が盛られています。

この本には「のちに『自分の会社をつくれ』と提唱した
竹村健一氏のベストセラーズのハシリみたいな提案が、
その中には随所に見られる。
この本ができた時、出版元の日本実業出版社の担当者たちが
どうしても定価を1500円につけたいと主張した。
ほぼ同じボリュームの本が6、700円しかなかった
時分であるから、どう考えても倍は高い。
仕方がないので、私はまえがきの中で
『この本を手にして定価が高いと思う人は
まだ税金の払い方の少ない人だから、もっと頑張って
高額所得者の仲間入りをしてから読んでもらいたい』
『収入の多い人は、乗る車だって高価な車に乗っているし、
身につける腕時計だって人より高いものをつけている。
高額所得者の読む本だから、収入の少ない人の読む本より高いのは
やむを得ないだろう』といった弁解をした」(『金銭処世学』)

なんでもお客が本屋にやってきて、
「『何という名前だったかわすれたけど、邱永漢さんの書いた
“税金逃れの本”をくれ』といったそうで、
『税金はきちんと納めろ、という本を書いたつもりなのに、
税金逃れとはひどいやね』と苦笑した」と
後の作品『お金の値打ち』のまえがきで邱さんは書いていますが、
読者の本音が表れていて面白いですね。

さて邱さんは『ゼイキン報告』と、この『節税の実際』の
2冊の出版で、たちまち“税法の権威者”になりました。

「私は毎年のように新聞や雑誌で国税長官や
東京国税局長の対談の相手をつとめるようになった。
私は税理士でも公認会計士でもなく、
また国税庁づとめをやったわけでもないから、
税法の専門家ではないだろう。
せいぜいのところ、納税者代表といったものにすぎないが、
私が従来の税理士のようなやり方では不十分だから、
と税務も含んだもう少し広い意味での
財務相談室の開設を提唱したら、
税理士さんのなかで
賛意を表する手紙をくださった方がたくさんあった。
しかし、なかには、税理士の資格も持っていない癖に
他人の縄張りを荒らすとはけしからん、と
抗議めいた文面の葉書をよこした税理士さんもある。

なるほど、私は税理士ではないけれども、
私の『ゼイキン報告』や『節税の実際』は、
税金を倹約する方法はないものかという本能にもとづいて
真剣に税法を読んだ結果生まれたものだからピンとくる。
そのせいかどうか知らないが、
正式に財務相談室を開いたわけでもないのに、
私のところへは次々と相談者がおしかけて来た」
(『私の金儲け自伝』)

税金を払う側にたった実際的な節税の知恵が求められる
というのはどんな時代になっても変わらないでしょうね。


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2002年12月14日(土)

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