Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第120回
銀行から信用される秘訣を書いた「銀行とつきあう法」

邱さんが日本で最初にお金を借りたのは
渋谷に買った30坪弱の土地にビルを建てるときで、
日本の銀行から600万円の借金をしました。
「香港に住んでいるとき家を買う際にも借金をしましたが、
その体験と比べると、日本の銀行は、お金を何に使うのか、
どうやって返済するのかなどと聞いてくる。
『ずいぶん面倒見のいいものだな』と感心した」
(『金儲け発想の原点』)とのことです。

こうした自分の体験にもとづいて邱さんは
昭和45年から46年にかけ、
日本経済新聞に「銀行とつきあう法」を連載しました。
銀行とつきあっていく上で
頭に入れておくべきことが執筆の対象で
たとえば銀行から信用される秘訣として
邱さんは次のようなことを書きました。
「嘘をつかないことのほかに、
たとえば借りたお金の返済にあたって、
約束した期日を絶対に間違えないとか、
あまり派手なところを銀行に見せない
といったことも大切である。

銀行員は3年もたてば転勤になるし、返済期日を遅らすと、
その常習犯という記録がのちのちまで残る。
個人的に銀行の支店長と親しくなるよりは、
きちんと借金返済の記録を残した方がずっと役に立つ。

というのも銀行の貸し出しにはワクというのがあって、
一旦、この人もしくは、この会社にこれだけのお金を貸し、
ちゃんと返済してもらった記録があると、
どこの銀行でも、ワクの範囲内なら二つ返事で
お金を貸してくれるものだからである。

ただお金の貸し手はいつもお金をきちんと
返してもらえるかどうか心配しているから、
お金を借りた人があまり派手なことをやると
途端に警戒心を強める。
銀行を安心させるということも、
お金を借りる上で大切なテクニックである」(同上)

さて邱さんがこうした文章を書いたころと
いまの銀行とはずいぶん違っていました。
「まだ銀行といえば、お金を預けに行くところで、
一般庶民が融資を受けられる時代ではなかった。
住宅ローンが制度融資地して定着したのは
ずっとのちになってからのことである。(略)

そういう時代に、
どうして私が銀行の話を書いたかというと、
自分と似たような立場の中小企業者も
たくさんいるに違いないと思ったし、
また将来、家を建てたいとか、
土地を手に入れたいと考える人は、
銀行からお金を借りなければ、
目的を達することができない。
同じことだが、借金ができるようにならなければ、
上手な財産づくりはできない、と直感したからであった」
(同上)

蛇足ですが、平成のデフレの時代は、
この作品を書いたころとすっかり様相が変わり、
邱さんは銀行をあてにしてはいけませんよという趣旨から
4年前に、真反対の『銀行とつきあわない法』
という本を書き、幻冬舎から出版しています。


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2002年12月25日(水)

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