Qさんの本を読むのが何よりスキ
という戸田敦也さんがQライブラリーのガイド役をつとめます

第242回
20年ぶりに株式市場に目を見張って書いた『邱永漢の株入門』

『ビッグマン』昭和60年の10月号に邱さんは
「損をしないで株とつきあう法」というタイトルの
エッセイを発表しています。
邱さんが株とつきあうようになった昭和35、6年頃から
昭和60年頃までの考え方と行動の変遷を
とりあげている作品です。
このエッセイの後半の部分で
『邱永漢の株入門』の発刊についてふれています。

「ほとんど20年ぶりといってよいほどの歳月を経過して、
私は久しぶりに株式市場に目を見張り、
新しく『邱永漢の株入門』を執筆した。
私の今度の考え方は、日本の証券市場を、
世界的な視野から見直すことであった。
こうなると、世界的に見て
国際的な競争力を持った大企業がまず注目される。
次には、世界的に見て成長産業に位置しているのに、
日本であまり注目されなかったリースとか、
フィナンシャル・サービスとか、
地方銀行とかいった銘柄が改めて買いなおされる。

それからもう一つは、アメリカとの苛烈な競争のなかで
生き残るであろう日本の半導体産業やバイオのような
先端産業が新しい成長産業として、
株式市場の一角を占めるようになる。
こうした三つの流れの中で、景気不景気の波に洗われながら、
世界中の資金を集めるとすれば、
日本の株式市場がいままでになく
全世界の注目を浴びるようになることは、
ほとんど動かすことのできない事実となるであろう。
このことはまた新しい投資家の参入を呼び起こし、
『第二の株キチガイ時代』の幕開けとなるであろう。
昨今、金融商品とか、株式市場がブームになってきたのは、
決して偶然ではないのである。

戦後の株式市場で約25年間を
体験した者の一人としてふりかえって見ると、
変化は決して平坦なものではなかったが、
何が大切かというと、
(1)他人の判断にたよらず、自分の考え方に従って
投資をすること。しかしそれよりさらに大切なことは、
(2)自分の固定化した判断に固執しないで、時代の変化に応じて
自分の考え方を修正していくことではないかと思う。

もちろん、辛抱強さとか、無理なお金を投じないとか、
危険を分散することも大切であろう。
そうしたことをすべて心得た上で、
頭の柔軟な切りかえができるか、できないか、
で株式投資の勝敗は決まるものだと私は考えている。」
(「損をしないで株とつきあう法」
『若気の至りも四十迄』(昭和61年)に収録)


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2003年4月26日(土)

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