パリだけがフランスではありません

第11回
フランス版おふくろの味

寒い日が続くと必ず我が家の食卓に上る料理があります。
フランス版おふくろの味とも言われる代表的な家庭料理、
ポ・ト・フーpot-au-feuです。

牛のスネあるいはモモ肉と
骨付きバラ肉をキロ単位の塊で使います。
それに玉ねぎ、ニンジン、キャベツ、セロリやポワロ、かぶなど、
皮をむくぐらいでほとんどそのまま
ぼこぼこと同じ鍋に入れて煮ます。
いずれも塊ですから
ゆっくり時間(最低2時間)をかけて煮こまなければなりません。
でも一度火にかけてしまえば手間いらずのうえ、
数日間食べられます。
主婦にとっては実に楽な献立かもしれません。

「おふくろの味」といわれる所以は、
時間をかけなければならない点と
ある程度の量を作らないと美味しくないからです。
さらにあまりに単純な料理だからでしょうか、
とにかく外食メニューでお目にかかることもほぼありません。
つまり独り者、忙しいカップル、働いている女性には
手の出しにくい料理なのです。
みんな実家に帰ってこの「おぶくろの味」を楽しみます。

大きな鍋を火にかけている間、
ガラス窓は真っ白に曇り、
外の寒さが嘘のように家の中はほっくりした温かさに包まれます。
そのうえ美味しい匂いがいっぱい。
外で遊んで暗くなって帰ってくる息子や、
仕事が終わって帰ってくる主人が玄関のドアを開けると、
家中のすべての空気と匂いがドドーッと動き、
入って来た彼らをたちまちのうちに包みます。
そんな一瞬のホッと緩んだ表情が見られるのも
時間をかけて煮こむ冬の料理なればこそ。

まず作ったその日はブイヨンをスープとして楽しみます。
煮返して味の染み込んだ翌日、肉と野菜を食します。
さらに翌日は残ったお肉を細かく刻み、
刻み玉ねぎと炒めます。
それを耐熱皿に敷詰め、上からマッシュポテトをたっぷり被せ、
さらにグリュイエルチーズをかけてオーブンで焼いた
アッシ・パルモンティHachis Parmentier。
誰もが好む一品にしていただきます。
ちなみにアッシはフランス語で「刻む」という意味です。


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2005年2月9日(水)

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