パリだけがフランスではありません

第55回
ヨーロッパ憲法に「OUI」か「NON」か

5月初旬、
我が家にもヨーロッパ憲法を記した冊子が配達されました。

A4版で、なんと191ページもあるものです。
各ページはぎっしりと文字(アルファベット)で埋まり、
見ただけで気が遠くなりそうな代物でした。

私はフランス語を学んでいる最中の人間ですから
「気が遠くなる」のは当たり前。
ところが普通のフランス人にとっても
ほぼ「気が遠くなる」感覚だったのです。

考えてもみてください。
「日本国憲法」の改正案が出たとして、
その文案がすべて一冊になって各家庭の有権者に配られたとしたら…
この冊子を見る限り、
日本の法律文書よりは判りやすく
平易に書かれているような気はしますが、
すべて理解するには相当の努力が必要でしょう。
テレビ・ニュースの街角インタビューでも、
みんな口を揃えて
「読めない」「無理だ」「理解不能」と不満を述べていました。

5月29日はフランスで
ヨーロッパ憲法に対して
「OUI」か「NON」かの国民投票が行なわれます。

シャルバーグ家では意見が分かれています。

両親は戦争を知っている世代。
戦争を二度と繰り返さないために
一つのヨーロッパを実現させようという初志の理念にそって
「OUI」。
さらに自分たちではなく孫の世代にとって良しとしています。
一方オリヴィエは、
一つのヨーロッパが一層の経済混乱を引き起こし、
国としてのアイデンティティーの喪失に繋がりかねない。
グローバルなビジネスに飲み込まれるより、
貧しくとも「フランス」は「フランス」らしくありたい。
今のところ「NON」に近い立場を取っています。
息子にも、均質な世界より
いろいろ違いがあって良いという意見です。

おそらくこれはフランスを二分している
代表的な考え方ではないでしょうか。

すでに100年近い歳月をかけて
一つのヨーロッパ実現を他国と共に進めてきたフランスです。
21世紀はその最終段階に入っているのかもしれません。
具体的な一歩だった通貨統合(イギリスは否決しましたが)、
ユーロ誕生から5年目。
はっきり「NON」と言わないまでも、
25カ国に増えたヨーロッパ連合の行く末を
一度立ち止まって考えようとする人々がいるのも確かです。

ヨーロッパ憲法承認は、
スペインでは70%以上の国民が賛成しました。
29日、フランス国民はどんな結論を下すのか、
今ヨーロッパ中が固唾を飲んで見守っています。


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2005年5月23日(月)

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