パリだけがフランスではありません

第79回
いちばん大切なものは何?

セネに越して1年ほどしたころ、
東京の知り合いの編集者から
『世界の中学生』(学習研究社刊)という
おもに学校図書館に置くシリーズの
フランス編の取材を依頼されました。

パリ (この取材は別の方担当)に加え
地方の中学生の生活も紹介したいとのこと。
私は3人、息子の学校友達の兄さんや姉さんを取材しました。

インタビューのなかで必ず聞いて欲しいといわれた項目があります。
小遣い。
将来の夢。
そして今いちばん大切と思うものは何か、という3つ。

前2項目は4人のパリ中心部の中学生と
3人のセネの中学生みなそれぞれでしたが、
いちばん大切にしているものは同じでした。
直接答えは書かれていませんが、
インタビューの文脈から考えてパリの中学生があげたのも
「家族」と「友達」だったのです。

第71回でフランスは離婚大国だと書きました。
家族の絆が密接であるゆえに、
ひとたび両親(つまり男女の関係)の間にひびが入ると
それは「まあまあ」でやり過ごせない。
男と女の問題ですが、「両親」という立場の場合、
間に立つ子供に親の不仲はそう簡単に理解できないでしょう。
大切に思っていればいるほど、
一緒だった家族がばらばらになる悲しみは深いに違いありません。

しかし離婚が成立した時点で
完全な片親との別れが待っているかというと、
どうやらそうでもなさそうなのです。
男と女として別れても、
子供にとって男は父親であり続け、
女は母親であることに変わりがないと理解されつつあるからです。

離婚が多くなり
両親と別々に暮らす子が増えたことによる
苦肉の大人の解決策かもしれませんが、
別れた親が交代で子供を見ることが一般化しつつあります。
特に休み中、つまり学校のない時期に
普段は別れて暮らしている
もう一方の親のところで生活するというのもあります。
たとえすでに再婚していたとしても行われるようです。

もちろんこれで子供の寂しさ、
心の傷がすべて癒されるとは誰も思っていないでしょうが、
伝統的な結婚生活をまっとうする人々もいれば、
新しい家族の姿を懸命に模索している人々もいるということです。

「今何がいちばん大切?」と質問され、
いずれにしても「家族」と答えられる中学生は幸せな気がします。
息子にもぜひそう答えてほしいものです。


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2005年7月18日(月)

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