ガンを切らずに10年延命-関根 進

再開!元週刊ポスト編集長の目からウロコの体験秘話!

第292回
続・生きる喜び、生きる哀しみ

作家の三木卓さんから贈られてきた
新著「懐かしき友への手紙」(河出書房新社)という、
≪いのちの連作エッセイ集≫の紹介の続きです。

こんどの新著も、三木さんと苦楽を共にした家族や友人たち=
人生の伴走者への思いを込め、
「耳」「指」「膝」「肌」「眼」
「咽喉」「血」「歯」「胸」・・・
いのちのひとつひとつを丁寧に観察描写しつつ、
「生きる哀しみ」を超えて、
「生きる意欲を奮い立たせてくれる」――ここが魅力です。

「膝」という項目のエッセイを開いてみましょう。
左足の小児マヒの後遺症で右足に負担のかかる三木さんが
45歳のころに痛風が悪化して、膝を切開手術するときの話。
なんとしても切りたがる整形外科医とのやり取りは、
痛みを伴って読者に迫ってくるのですが、
「ガンを切らずに10年」の僕としては、
「切るべきか、切らざるべきか」を論争する奥さんとの
やりとりが、とても身につまされました。

「彼女はあっさりといった。
『外科の若い医者というものは、
切りたくて切りたくてたまらないのよ。
あなたはそのあわれな犠牲者よ』(中略)
手術ははじまった。ぼくはうつぶせにになって手術台に横たわり、
右側の膝裏の右側からメスがはいった。
それからがたいへんだった。(以下略)」

詳しくは、三木さんの新著を読んでほしいのですが、
これが決して「生きる哀しみ」だけに終わらず、
どのエッセイも、「生きる喜び」「生きる意欲」に展開が
跳躍していくところに魅力があります。
いのちを形而上学的にとらえる
仰々しい論文は世の中に溢れていますが、
痛みと快感を持って「肉体の感覚」から、わが人生を観察し、
母と「指」「肌」、兄と「咽喉」、
そして、妻、兄や友人の「ガンとの闘い」・・・
いのちの細部を描写して、
人生の喜びと哀しみを綴った感動の連作集です。

三木さんは70代半ば、僕より5歳、人生の先輩ですが、
「人間であることは、すべて満足と感謝のなかにある」――と
書いておられるように
その「満身創痍」の三木さんも
「歯」が強いのが≪自慢?≫(^0^)のようです。

健筆はますます熟練の域に達しています。
その一連の珠玉の作品には、芥川賞をはじめとして、
平林たい子賞、芸術選奨文部大臣賞、谷崎賞、読売文学賞、
毎日芸術賞、藤村記念歴程賞、蓮如賞、日本芸術院賞恩賜賞と、
きら星のように≪いのちのご褒美≫が贈られていることは
皆さんもご存じのとおりです。

秋の夜長に、いみじみと心にしみわたる1冊です。
お薦めします。


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2009年9月4日(金)

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