誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第17回
士大夫の顔はいま何処……

最近の日本人の顔は
急激に変わってきているように思える。
特に若者たちにその傾向が著しく、
面長で顎の尖った、いわゆるソース顔が蔓延してきている。
そして心なしか目尻も垂れ下がってきたようだ。
一方、我ら50代以上は
丸いのや四角いの、三角といった、いろいろな頭の形があって、
エラが張り、
鉄板など噛み砕いてしまいそうな顎をしている者もいる。
新撰組の近藤勇の顔写真を思い浮かべてもらうとわかりやすいが、
どこか非文明的で狂暴性を宿した顔つきをしているのである。

人間の顔なんてものは
環境や食いもので刻々と変わるものらしく、
南方の色の黒い人も
北方の寒冷地に住み続けると、
およそ5000年くらいで、色の白い人に変わってしまう
と偉い学者が言っていた。
それに比べれば、戦後60年、
日本人の顎が細くなったくらい驚くには当たらないが、
平和と豊かさの象徴のようなこのソース顔には、
よほど不健康なものがあるような気がする。

ボクシングの世界には
glass jaw(ガラスの顎)という言い方がある。
つまり打たれ弱いという意味だ。
日本にもハードパンチャーであるにもかかわらず
攻められるとからきしダメ、という元世界チャンピオンがいた。
総じて顎の華奢なボクサーは打たれると弱い。
つまり、ガラスの顎をした今どきの日本の若者たちは、
リング上ではみなすこぶる打たれ弱いということになる。

顎が細くなり、
歯の矯正をしている子供たちが多くなったのは、
ハンバーグやら蒸しパンといった
やわらかいものばかり食べているせいだ、と専門家はいうが、
そればかりではないような気がする。
ジャニーズ系の可愛い顔の男の子が増えたはいいが、
顔だけでなく精神まで蒸しパンみたいに
ふやけ切ってしまっているように思えてならないのだ。

俗に、士大夫三日会わざれば刮目して待つべし、という。
が、今どきの男たちは
三日どころか三年ぶりに会ったとて
進歩の痕跡すら見られず、
別れる前とまったく同じ呆けた顔をしているに違いない。
もちろん面貌にくむべく、言葉に味などないだろう。
しょう油顔もソース顔も関係ない。
問題なのはガラスの顎ではなく、
刮目するに値する士大夫が払底している、
ということなのである。


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