誰が日本をダメにした?
フリージャーナリストの嶋中労さんの「オトナとはかくあるべし論」

第97回
手足をもがれた教師たち

私はかつて、中学校の父母会の席で
「子供の前では父親のことをこき下ろしたり、
 教師の悪口は言わないほうがいい」
と発言したことがある。
母親たちは神妙な顔をして頷いていたが、
数日後、
「○□さんのご主人は右翼の人らしいわよ」
という噂が電光のように駆けめぐった。
この国では、
「しっかり挨拶をしよう」とか
「先生を敬おう」とか
「国を愛そう」といっただけで右翼にされてしまう。
それでは聞くが、
そのほとんどが愛国者といわれているアメリカ人はみな右翼か?

私は教師に同情する者である。
なかには明らかに出来損ないといえる教師もいるが、
どこの企業にだって二割くらいの能なし社員はいる。
教員だって同じだろう。
日本の公立校の教師はとてもかわいそうだ。
昔だったら授業態度のわるい子を
「廊下に立ってろ!」と強制的に排除できたが、
今そんなことをやったら親たちが大騒ぎする上に、
教育委員会からもきついお叱りを受けてしまう。
長時間立たせれば、子供は苦痛をおぼえ、
そのことが即「体罰」を加えたことになってしまう。
漫画『サザエさん』の腕白坊主カツオは、
昔はよく廊下に立たされていた。
妹のワカメにそれを目撃され、
恥ずかしそうに首うなだれるシーンがよくあったものだ。
が、近頃はとんと見なくなった。
カツオが優等生になったためではない、
単に体罰が禁止されているためなのである。

次女の中学時代、某授業参観に出席したことがある。
授業の中身は退屈だったが、
生徒の中に一人、最初から最後まで寝ている奴がいた。
父母たちを前にしてずいぶん剛胆なガキだが、
気の弱そうな教師は
気にかかってしかたがないというそぶりは見せるものの、
結局何もいわなかった。
というか、手足をもがれているため、何もできなかった。
廊下に追いやれば、「学習権の侵害」だし、
立たせれば「体罰」、
廊下の窓を開けて授業を聞かせてやったとしても、
第三者に見られたりすれば「プライバシーの侵害」になる。

何が学習権の侵害だ。
学習したくないから眠ったり、立ち歩きをしたり、
騒いだりしているんだろ。
1人の不心得者のために、
40人の生徒のうちの39人までもが勉強する機会を奪われている。
彼らこそ「学習権」を侵害されている被害者ではないか。
腐ったリンゴは排除しなくてはならない。
その権限を教師に与えないのはフェアではない。


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