「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第13回
実務編(3)
半端ものを買う羽目に・・・

骨董の商売をしていると時々こんなことを言われる。
「あんたの商売はいいね。物が痛むことがないから。
 それに流行も無いから在庫していても安心だね」
確かに骨董屋の商品は傷むこともないし、流行も無い。
古くなれば古くなったで時代が付いてくるし、
茶碗なんか使っているうちに値打ちが上がることもある。

しかし、仕入はどこかの問屋が持ってきてくれるわけでもなく、
世の中の流行に乗って商売ができるわけでもない。
自分のカンで「エイ!ヤ!」と買い付けるのだ。
それだけにいい買い物ができるととても嬉しいが、
逆に買い付けてからぼろぼろ欠点が見えてくるものもある。
何年経ってもこれが頭痛の種だ。

売れ筋で誰にでも好まれるような良いものは仕入れ値も高い。
以前100万も出して仕入れたものを
「アンタこれはいいものだけど100万で譲れ。」
と散々に値切られ105万で売ってしまった。
その間6時間ほど抹茶やコーヒー出前の弁当まで取って、
顔は愛想笑いでしわだらけになり、へとへとになってしまった。
客は韓国財閥の御曹司だとか言っていっていたが、
あんなにシビアな値段交渉をするのだから
きっとソウル辺りの骨董屋に違いないと今も思っている。
ともあれ、いいものはこんな風にすぐ売れるが
切手みたいなもので殆ど利益が無い。
しかし骨董屋にも少し息がつける仕入のチャンスがある。

あるとき店に電話があり、
「売りたいものがあるのだが買ってくれませんか。」
と言ってきた。
話を聞いてみるとまじめな感じがする。
「出来れば写真を送ってくれませんか。」
と言うと、
「明日持ってゆきます。」
と、積極的なアプローチであった。
翌日品の良い男女二人ずれがやって来て5点ほど作品を取りした。
うち三点は喉から手が出そうになるくらいの魅力ある
宋代の白磁だった。
あとの2点はあまりぱっとしない備前と信楽の壷だった。
宋代の白磁はすぐに売れるものでこれだけを買い取りたかったが、
2人は備前と信楽の壷セットでなければ売りたくないと言う。

「他の店へ持っていってそこで売れなければ
 また持って聞きください」
と言っていったん商談を打ち切った。
2人は荷物をまとめて外へ出て行った。
だめかなと思っていると
3時間くらいして申し訳なさそうな顔をして戻ってきた。
「やはりあなたの店で買っていただきたい」
と言って、先ほどの包み紙をこちらへ押し付けるのだ。
「あなたの店は本当に親切で、
 良心的だということがわかりました。」
と、こんな風に持ち上げられると
やはり男の花を見せたくなるものだ。
とうとう抱き合わせで買ってしまった。

3点の中国陶磁はすぐに買い手が付いたが、
信楽と備前の壷は買値のこともあってほとほと手を焼いた。
骨董に半端ものはない。
思い切り安く仕入れるか、とてもよいものを買うかしかない。
中途半端な買い方をするととても苦労する。
くれぐれも半端な買い方をしないよう
きちっと目的を持ってトライすること。


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