「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第97回
商品学(チベット・ネパール編)
タンカII―大資本には気をつけよう

チベットタンカ17世紀

この担当者については
知り合いの同業者からよく愚痴を聞いていた。

「売り上げ保証するといわれたので
 別注の作品を作ったのに
 仕上げた途端もう要らんと言われた」とか、
せっかく開拓した作家を
「名前が売れてきたら直接やりますからといわれた」
と散々裏話を聞いていたので、僕もちょっと腰が引けていた。

「上がうるさいので売上保証は出来ませんが、
 まああなたに損させる事はしませんよ」と彼が言った。
やばいと思いつつもその話を受けてしまった。

2月の初旬、
朝夕結構冷え込むカトマンズの骨董屋を歩き回り、
タンカの仕入れに駆けずり回った。
ホテルアンナプルナの横のショッピングプラザに
比較的よいものがあった。
50、60年程前の作品だったが、結構良いできであった。
それらは1点700ドルから1500ドルくらいの値段が付いていた。

「古くもないのに何故こんなに高いのか?」
と聞くとギョロッとした目の店主が
「あんたが選んでいるのはちゃんとしたタンカだ」
というのである。
お土産みたいな絵の荒いものと
本格的な作品の違いだというのだ。
僕が選んだのはラマ僧が
昔から受け継がれた伝統的な手法で書いたものらしい。
僕の目を誉めてくれたのはよいが、結構高い買い物だった。
これは難しい仕事になるなと思いつつ
担当者の顔を目に浮かべ、タンカを持って日本に帰った。

案の定、すばらしいタンカをそろえたのだが
展示会ではたったの2点しか売れなかった。
「結構厳しいですね」と嫌味を混ぜつつ言ったが、
「仕方ないですね。またどこかで埋め合わせしますよ」
と言ったきり、
今日までタンカの埋め合わせはしてもらっていない。
僕はつい最近まで四苦八苦して在庫を抱えていた。
それ以後僕の大資本を見る眼はシビアで疑い深くなっている。
気をつけよう。調子のいい人と軽いのり。


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