「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第99回
商品学(インド編)
天国の石彫と地獄の糞尿

カジュラホ寺院彫刻

2月9日にインドへ行った。
ベナレス、カジュラホ、タージマハールなど
石造建築は壮大で繊細な石彫文化の頂点を極めるものだった。
また、装飾の石像などは計算されつくした緻密な中に
素晴らしい芸術性を持ったものだった。
インド人は世界で最も石をよく知り、
巧みな技術を持った民である。

インドを8日間ぐるっと見ただけだが、得るものは多かった。
僕はアジアの石彫はすべてインドが出発点だと感じた。
中国の石窟寺院や石像も、
カンボジアの巨大なアンコールワットや
インドネシアのボロブドール、
アフガニスタンのバーミアンも
インドの石文化の一部なのだとおもった。

これほど素晴らしい石文化を持ったインドだが、
その実態はすごかった。
とにかく汚いのだ。
糞尿にまみれた国だった。
牛がいたるところに糞をし、
べナレスの路地など、
数百年前建造された美しい建物がまったく目に入らなかった。
ただただ糞を踏まないよう下を見続けて歩いた。
帰国して約1ヶ月が経つが
今でも目をつぶるとその光景がはっきりと残っている。

地面に『べチョッとした』大きな牛のウンチが落ちていて
それが2、30%を占める。
そこら中にアンモニアの匂いが強烈に漂っていた。
回収する人がいるのだろう。
町のあちこちに形を整えてこの牛糞が干してあった。
燃料に用いるのだ。
それでチャパチィというパンを焼いていた。
これこそ究極のエコサイクルといえるだろう。
おかげで今回もきつい下痢をした。

旅の途中、ガイドに耳寄りな話を聞いた。
今インドはあちこちで工事ラッシュに突入しつつあるらしい。
それで現場を掘り返していると
時々素晴らしい古代の石造が出土するのだそうだ。
それらを美術館で保管しようと思っても、
あまりにも数が多すぎて収蔵しきれないでいるとのこと。
それでオークションにかけて近々売り出すとのことだ。
広大なインドの大地から出土する美術品の量が
どれだけになるのか想像するのは難しいが、
インド美術を入手する、
またとないチャンスではないだろうか。

あれほど広大で長い歴史を持った
中国の大地から出土した美術品も
このごろでは消化してしまって、
逆に日本に中国人が買い付けに来ているのだ。
柳の下にドジョウは二匹、
僕はこのチャンスにかけてみようと思う。

ベナレス

←前回記事へ 2005年3月25日(金) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ