「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第154回
骨董と人―ボロは着ててもブラックカード(その人の名はビル・ゲイツ?)

9世紀ガルーダ(クレアン様式)

バンコクにリバー・シティと言う
骨董屋の集まっているビルがある。
その中に僕の古くからの取引先がある。
そこでの話。

店頭の品物をネゴしていると話が長引くと思ったのか、
店主が「ちょっと」と言って外出してしまった。
店番の奥さんも昼食を買いに行くと言う。
「ノリキさん、20分ほどお願い」
と、微笑みながらヴィトンのポシェットを担いだ。
彼女がドアを開けると同時に、
20代後半と思われる白人の若者が入って来た。
奥さんは若者の服装をジロッと値踏みして、
客にならないと思ったのか言葉も掛けず出て行ってしまった。
Tシャツにペタンコのサンダル、
ジーンズはポケット辺りが擦れて糸もほつれている。
当時1980年代後半はまだ男性のピアスが流行る前だったが、
彼は片方の耳に銀のピアスをしていた。
カジュアルだがどこかすっきりとしていた。

こういうネオ・ヒッピースタイルは、
骨董屋の客にならないことを僕も良く知っている。
僕の店にも、時々あつかましく入ってくるこの手合がいる。
店の中で座り込み、いつまでも立ち去らないので、
聞いてみると画家だったり陶芸家だと言ったりする。
さすがにピカソぐらいは知っているが
ダリもムンクも平山郁夫も知らないのが殆どだ。
今絵を描いているから画家だと言っているのだろう。
ヒッピーもトラベラーも職業くらいに思っているのかもしれない。

                     (続く・・・・)


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