「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第183回
損する骨董−気をつけよう、耳傾けて損する5つの手口

よく出来た北宋耀州窯青磁碗の偽物


「これを、買ってしまったのですか?」
とつい詰問調で尋ねてしまった。
「ハイ、成り行きで買うことになったのです」
と、ばつが悪そうに奥さんのほうを向いた。
「旅行社のツアーで中国旅行に行ったのです。
 博物館に案内され、説明を聞いていると
 スタッフから、ここの収蔵品を売りますからどうですか、
 と言われて心が動きました」
と言う。
彼は博物館の立派な宝物を見た後だったので、
保証書の作品を200万円で買うことにした。
雰囲気に飲まれ、大変な宝ものだと錯覚したようだ。
それに博物館を案内した人を、
美術館の人と信じ込んでしまった。
しかも高価な美術品を
日本まで大手○○旅行会社が保障して送ってくれるという。
だから200万円くらいは安いと考えたようだ。
しかし日本に帰ってきてよく考えてみると不安になった。

「幾らくらいするものですか?」
と聞き、彼は僕の口元をじっと見ている。
「悪いけどこれは値が付きませんよ。
 工芸品だから、全く同じものというわけにはいきませんが、
 この辺りで5万円もあれば十分集まります」
と言うと、ご主人のほうはがっくりしてしまった。
奥さんはそれ見たことかと胸を張った。
「だけどこれ、5万円で買ってくれといわれたら僕は断りますよ」
と言うと、奥さんが大きく頷いた。
「やっぱり骨董はダメね!」と言うではないか。
「奥さん、骨董がダメなんじゃなくて、
 選ぶものがダメなんですよ」
と言うとしょぼんとしてしまった。

・ 博物館の収蔵品だという触れ込み
・ 館のスタッフだと言う説明員(本当はその館付属の売店の店員)
・ 高価な美術品の雰囲気に酔った勘違い
・ 日本の大手旅行会社の信用と運送保障
・ 立派なホルーダーつきの保証書

骨董にはこんな飾りは一切無いのです。
自分の目を肥やし人に依存せず、
楽しみながらコツコツ勉強して収集するのが本当のやり方です。

それにしても皆さん気をつけてください。
世間には本当に悪い奴がいるのです。
中国、インドでだまされるケースが圧倒的に多いですよ。
あるところなど美術館とグルのようですよ。
よーく気をつけよう。


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