「骨董ハンター南方見聞録」の島津法樹さんの
道楽と趣味をかねた骨董蒐集の手のうち

第187回
損する骨董−4人の億万長者 早耳の寝業師

偽物の明萬暦五彩鉢


Dさんの風貌は茫洋としていて、本心がつかみにくい。
物いいもゆっくりしているので、誰もがのろまだと思っている。
いろいろな分野の事業をやっているので、ある時、
「何がご本業ですか?」と僕が聞いた。
「自分でも本業が分からない」と、言うくらいだ。
そのDさんの得意技は早耳だ。
不動産情報など神業に近い。それに正確無比。

「あそこの角地、売りにでまっせ」
と言うDさんの言葉をチラッと聞いた。
しばらくすると、本当に売りに出されていた。
そんな人なのでバブル期には、膨大な土地を買い捲っていた。
しかしDさんは手仕舞いも早かった。
「もう土地はアカン」と言って、
銀行がもたもたしている時期に手持ちの土地をどんどん売った。
「こんなときに迷って、ババつかみするやつがいるんや」
と駅前の一等地でも気前よく売っていた。

「しばらく何もする事がないから骨董でも買うか?」
と言って、4人の中で一番最後に骨董の世界に入ってきた。
僕を嬉しがらせてくれたのは最初の1,2点だけで、
二十数年お付き合いしているが
買ってもらったのは全部覚えているくらいだ。
しかし彼の話は面白い。

「あそこの会社、倒産しよるで。
 社長趣味人やから骨董品仰山あるやろ」
しばらくすると、その会社の整理目録を持ってきたりする。
ある時アパレル大手の倒産があった。
新聞にも載ったので
「へ〜、こんな会社でも倒産するのか」と怖くなった。
その頃になると皆反応が鈍くなっていた。
あまりにも大手の会社がどんどん倒産していた。
ある日Dさんが、店の前に車を止め
「島津さん、鑑定してくれんか」
と、車に乗れと手招きした。
着いたところは新大阪近くのビルの中だった。
広いフロアーいっぱいに
焼き物、ブロンズ、象牙細工など骨董品が所狭しと置いてあった。

                 (次回へ続く・・・・・)


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