亭主を夢中にさせる術
恆娘が隣の女に授けた亭主操縦術というのはこうである。
まず亭主が帰ってきても、一緒に寝ない。今までは、お妾の宝帯にやきもちをやくことに精一杯だったが、朱は恆娘の助言に従って、宝帯を飾り立てて夫の添寝をさせた。夫が飲んだり食べたりする時も、宝帯におしょうばんをさせた。洪が時折、妻に言い寄っても、朱は、いけませんと拒んだので、皆が「あの人は賢妻だ」とささやくようになった。
一ヶ月あまりたって、朱が隣家に行って恆娘にあうと、恆娘は喜んで、
「うまくいったわね。おうちへ帰ったら、お化粧はやめてしまいなさい。きれいな服は全部やめて、お化粧もしないで、破れ靴をはいて、家の人たちにまじって働きなさい」
言われた通り、つぎはぎの服を着て、わざときたならしく見せかけ、忙しく立ち働いていると、亭主の洪は妻をふびんに思って、宝帯に手伝わせようとした。しかし、朱は一切受けつけず、宝帯を追い立てて仕事をやらせなかった。
また一ヶ月たって隣家へ行くと、
「本当に教え甲斐のある人ね。あさってはお節句ですから、あなたをお散歩にお誘いするわ。あなたは今までの破れ服を脱いで、上から下まで、サラの服に着替えて朝早くうちへいらっしゃい」
言われた通り服を着替えて隣家に行くと、恆娘は今はやりの髪形を結ってくれたうえに、上衣が流行にあわないからと、ほどいてなおしてくれた。また靴も似合わないと言って、引出しの中から新しいものを出してくれた。おまけに帰りに酒まで出してくれて、
「さあ、これで細工はりゅうりゅう。帰ってちょっとご主人にあって顔を見せたら、すぐ戸をしめて寝るのよ。あの人が戸を叩いてもあけてはいけません。三度もそういう日が続いたら、一ぺんくらいあけてあげてもいいけれど、口で舌をもとめてきても、手で足をもとめてきても、みんないやがって見せるのですよ」
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