自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第649回
シェフ、板長に聞いてみたい その1
それでも彼らに取材やコンサルしてもらいたいですか

新しいシリーズです。
よく言えば思考が柔軟なのか、はっきり言えば散漫なのか、
私は今までもこれらシリーズものをいくつも考えてきましたが、
ネタ不足で何回かで頓挫、
または書いている本人がシリーズの存在を忘れてしまう、
といった繰り返しでして、
長く続いているのは「ワインの諸々」くらいしかありません。
今回のシリーズも先はどうなるかわかりませんが、
私は今まで、「シェフ、板長を斬る」としまして、
一般客の立場に立っているとはいえ
一方通行で店評価のようなものをしてきました。
しかし、色々書いていくうちに、
逆にシェフや板長に本音を聞いてみたいといった
持ち前の好奇心がどんどん沸いてきたのです。
覆面ですから、店へ入って直接質問するわけにはいきません。
幸い、このコラムの読者の方の中には、
飲食店関係者の方もかなりいらっしゃると推測されます。
現にときたま間違った私の認識へのご注意や
裏情報をいただいこともあるからです。
ただし、このシリーズの目的は、そのような読者の方々からの
回答だけに期待しているのではありません。
友里流の問題提起としての洒落というか皮肉も含めております。

まずは第一回。
すばり、自称料理評論家である山本益博氏、
フード・レストランジャーナリストである犬養裕美子さんが
コンサル業をも看板にしているという話は
以前のコラムで書きました。
他にも大谷浩己氏、浅妻さん、小石原さんなど
名だたる方がご活躍で、
今日もどこかの店へ取材に入り
紹介記事を執筆していることと推測します。
しかし、あの「さとなお」さんも意外にも最近の日記では、
レストランジャーナリストと名指しで、
「完全に店側スタンスでレストラン批評をしていない」
と手厳しいことを述べてられます。
昔から店に対する辛口の批評をする方は
何人かいらっしゃいましたが、
飲食店の宣伝屋である自称料理評論家、グルメライター、
フード・レストランジャーナリストに対して
批判していた記事は見かけませんでした。
まして名指しや特定できる肩書きで。
そういった意味で、今回の「さとなお」さんのコメントは注目です。
少しずつですが、今までのような
「煽り記事」、「シェフとの緊密な関係をウリにする」
といったこの業界での生き残り手法に対して、
疑問の声が多くなってきたのではないでしょうか。

そこで私はあらためてシェフや板長に聞いてみたいのです。
「いまでもマスヒロさんや犬養さんに来店してもらって、
ヨイショ記事を書いてもらいたいですか」
「マスヒロさんたちとコンサル契約を結びたいですか。
でも、今まで売り出しでうまくいった店が
そんなに多いと思いますか」
「一行樹みたいにその気にされて、プロデュースにのって、
地方から東京にでてきたいと思いますか」

一時的にはマスヒロさんや犬養さんが煽った店は、
「純粋」な読者が殺到するでしょう。
でもそのマジョリティは経験の浅い移り気な人たちです。
その反面、外食機会の多い
自分なりの評価基準をもったマイノリティの方たちは、
はっきり言うとマスヒロさんや犬養さんを下に見ているはずです。
「何もわかっていない癖して」と口には出さないでしょうが
私の経験からそう考えている方が多いと推測します。
つまり彼らに「べた褒め」してもらうということは、
逆に継続・常連になるかもしれない「食通」の
反発を受ける可能性があるということです。
反発しないまでも、
そんな店には足が遠のいてしまうこともあるでしょう。
いつまで続くかわかりませんが、
彼らが不自然に「べた褒め」した店には、必ず友里は突入します。
(地方は難しいです)
読者の目があるので、
コンサル業を前面に打ち出せない評論家、ジャーナリストですが、
最適なアドヴァイスで店をうまくリードしたという話は
聞いたことがありません。

私は敢えて質問したいのです。
それでも彼ら料理評論家、フード・レストランジャーナリストたちに
頼りたいのでしょうか、と。


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2005年5月20日(金)

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