自腹ゆえに本音、愛するがゆえに辛口。
友里征耶さんの美味求真

第968回
ワインの諸々 101
ワインリストをつくらない店の狙い

客がワインをまったく選べない
「お任せワインシステム」も問題ですが、
スタッフが数本持ってきたワインからしか選ぶことが出来ない
「ワインリストを作っていない店」にも困ったものです。
古くは、六本木の「アモーレ」、銀座の「クロ ド ミャン」など。
客の好みを一応聞きますが、
スタッフが持ってくるのは州など生産地が明らかに違うことによる
味わいの異なるワインが2〜3本。
絶対価格を開示することなく、
客はその数本から選ばざるを得ないこのシステム、
ワインを選ぶという
レストランでの客の楽しみの一つを拒否する悪弊だと私は考えます。

最近も私はこのような店に遭遇しました。
なぜかネットや「さとなお」さんに評判がよくて人気の
銀座「ドナ ステラ クッチーナ オオサコ」であります。
一人しかいないホールスタッフは客の好みを聞いてきますが、
セパージュや州を言ってもその条件に合うワインを持ってきません。
ぜんぜん関係ないセパージュや州のワインを2本持ってきて
選ばせるわけです。
いずれもほとんど知られていないイタリアワイン。
この店は6千円、7500円と価格を開示しますが、
無名のワインなので市場価格をつかみにくくしているのは
高等戦術でしょう。

私はこの時はじめて、
このシステムの店側の狙いに気がついたのです。
要は数種類しかワインを用意せず、
在庫、デッドストックのリスクを持たない方針ということです。
隣客のテーブルには違うワインを2本持ってきましたから、
最低でも4種あるでしょうが、種類はかなり限られているはず。
仕入れロットも多くせず、店都合でどんどん売り切って、
また別の無名ワインを小ロット仕入れる作戦であります。
数行しか書けないわけですから、
ワインリストをつくることができないのです。
ワインリストをつくらない店、聞こえはいいですが実は
「無名のワインを数種類、小ロットでしか仕入れない店」
が本当の姿。
こう書くとまた「しみづ」から
「友里のいうことは8割がたあたっているが、
それでは儲けられない」と反発されそうです。

ついでですがこの店にはもう一つ問題点がありました。
人気店の理由が見受けられない凡庸な料理についてではありません。
ネットでも述べられていますが、この店は男二人で行っても、
「パスタは量があるので一つで充分です」と言って来るのです。
ネットでは女性二人でもそれほど量が多くはない
と書かれてあったのをチェックしていたので、
「大食いだからかまわないので二つ」
とスタッフの申し出を断りました。
それでも「ポーションが・・・」と食い下がってきましたが、
ことごとく却下。
スタッフは顔つきが変わって切れかけたように見えましたが、
渋々厨房へオーダーを通したのです。

客が食べられる、つまり客の食の太さを知るはずもないスタッフが
どうしてパスタは2人で1人前に拘るかおわかりでしょうか。
この店はホールも一人ですが、キッチンもシェフ一人です。
しかも決して手際よく、
段取りよく調理しているように見えないシェフ。
そうです、キャパ20名ほどのこの店にある程度客が押し寄せて
それぞれがパスタを頼んだら対応できなくなるのです。
ただでさえ、料理の出が遅くてストレスが溜まる店。
そこへ、各自が人数分パスタを頼んだら
パンクしてしまうのでしょう。
このキャパで、
キッチン、ホールで一人しか置かない運営は無理というものです。
人件費節約しすぎです。

キッチンスタッフがもう一人多い「ビンゴ」でさえ、
1コースでしかも客全員の料理が同時進行という特殊運営。
それでもかなりストレスは溜まりますから、
オオサコのように前菜、パスタ、メインと5種ほどの料理を、
客に負担かけずアラカルトで出すことができるはずがありません。

ローブリューで「シェア論争」したスタッフと共通する
この店のホールスタッフのでかい態度。
パスタにはラグー系はなく、フォンなど出汁を使った創作系ばかり。
メインの琉球豚も火が入りすぎでした。
料理はぜんぜんたいしたことない店。
深夜までの営業と、うるさいBGM、
切れかかる声のでかいホールスタッフに
手際の悪いシェフの創作イタリアン、
というのがこの店の特徴でしょう。
こんな店をどうして評価するのでしょうか「さとなお」さん。
身元を明かして特別扱いで居心地がよほどいいんでしょうね。

最後に、パスタの量は少なくなかったですが、
来栖王様でなくても、
普通の食欲の方なら充分食べきれるものであったことを
書き足させていただきます。


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2006年4月30日(日)

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