しかし、さらに突っ込んで考えてみると、教育程度が高いことだけで、工業が発展するものでもない。ある程度、教育を受けておれば、理解力が高くなることは確かだが、それが工業生産に結集して成果をあげるためには、それ以上の何らかの資質が要求されると考えたほうが順当であろう。それが何であるかについてはいずれふれるとして、人間の質、別の言葉で言えば、労働の質が経済の発展を左右することだけは確かであろう。
最後に、列島の海岸沿いの交通至便な工業地帯という見方は、いささか私たちの意表をついている。というのも、意識的にそういう工場の配置が行われたわけではなく、戦前は港湾設備のあるところを中心に、京浜、阪神、北九州と工業地帯がつくられたのが、やがてそこだけでは不足するようになったので、臨海地域を選択しているうちに、港のできそうなところをずっと開拓していっただけのことだからである。
しかし、いわれてみれば、日本は島国だから、海岸線が長いのは当然だし、港のできそうな地域を陸上でも鉄道や高速道路でつなげば、いつの間にか効率的な交通網ができあがる。
海外から原料を運び込んだり、逆に製品を運び出したりするのは、大型船で海路を使えば安上がりだし、人や部品を動かすのは陸上運送にたよればよい。
鉄道はどこの国でも運搬手段としては斜陽化しているが、それと入れかわるようにトラック運送や宅配便が発達してきた。陸運はけっしてコストの安いものではないが、少量運送には向いている。海と陸とを巧みに使いわければ、無意識のうちにコスト・ダウンになる。島国という条件は、狭い土地でできる工業生産に向いているので、アメリカのような広大な地域でやるよりはずっと有利である。
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