商社は世界貿易で今後も独自の役割をはたす
ではどうして商社がメー力ーに出たり入ったり介入できるかというと、メー力ーは商社が介入することによって、原料の確保や製品の販売代金の回収について心配する必要がなくなり、生産に専念できるというメリットがあるからである。商社の役割のなかには売買と金融の二つの面があり、日本の国全体が資本の不足に悩んだ時代には、商社の金融業者としての役割がかなり尊重された。まだメイド・イン・ジャパンの商品が海外に市場を持たなかったあいだ、商社の役割は海外から輸入される原料の確保面で格段の優位に立ったが、やがて輸出貿易が盛んになると、織維の輸出商社にすぎなかったのが鉄鋼、造船、家電製品にまで及び、輸出入の両面で世界中に独自の地位を築くようになった。しかし、出発点からして、日本のメー力ーのためのご用聞きをすることであったためか、輸入をするにせよ、輸出をするにせよ、取引のどちらか一方に日本のメー力ーもしくは販売業者がかかわっていないとやれない。言ってみれば、そうした日本のメー力ー、もしくは卸売業者のために商品の調達をするのが日本の商社であり、商社が第三国間の取引に介在することは滅多にない。たまにあったとしても、相場の変動や取引先の安全性を読みきれず、勝負に負けて安宅産業のような運命を辿ってしまう。だから第三国間の取引には極端に警戒的になり、韓国や台湾のメー力ーのような、勝手知った相手でないと、懐にとび込むような取引には慎重になってしまうのである。しかし、韓国や台湾の輸入メー力ーは日本の商社の威力をよく知っている。日本の商社が介入することによって、ある程度受注量の確保ができるし、注文どおりの製品をつくれば、お金を払ってもらうことについても心配はない。
他方、商社に注文を出すアメリカとか、アフリカの輸入商のほうでも、万一、注文どおりのものができてこなかったり、納期が遅れたりした場合、未知の異国のメー力ーを相手にクレームをつけることには不安を感ずるが、あいだに日本の有力商社が入っておれば、いざというときに知らん顔をされないですむという安心感がある。すなわち商社は、双方にとって保険会社の役割もはたしてくれている。
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