物を安く手に入れることに不熱心な日本人
日本と違って、東南アジアに行くと、メー力ーと小売商のあいだに問屋が介在していない。メー力ーが自分たちのつくった商品を直接、小売商に卸してまわる。だからメー力ーの卸値の中には問屋業務に使われる費用が含まれており、メー力ーが手に入れるマージンはかなり高い。台湾や香港のメー力ーの計上益が売上高に比して高いのは、そうした流通利益が含まれているからである。東南アジアに進出した日本の企業は、物をつくっても、それを取り扱ってくれる問屋がないために、思わぬ苦労をする。自動車や家電製品のような大物なら、販売店をつくったり、量販店と直接契約したりすることができるが、加工食品のような、保存に技術を要するようなものとなると、どうしてよいかわからなくなり、「問屋があったらなあ」と嘆きたくなる。たまに「私がやりましよう」という申し出があっても、そういう業者はメー力ーの品物を小売店に配達してくれるのはよいが、集金をすると、お金を持ってドロンをきめ込んでしまうことが多い。メー力ーは日本の問屋のようなキメの細かいサービスはできないし、小売店のほうでも、日本の電器の安売り屋のようにお客の便利を考えて、あらゆるメー力ーの商品を一堂に集めてお客に選ばせるようなサービスはしていない。
一軒一軒の小売店がメー力ーの専属店であったり、専属店でなくとも特定のメー力ーからだけ直接に供給を受けているので、品揃えには限りがある。これらの小売店の唯一のセールス・ポイントは「安く売る」ということくらいなものだから、町で売られている価格は最初からスーパー並みであり、日本のスーパーが東南アジアに進出して安値で現地の小売商と競争することなど思いもよらないことなのである。
その代り日本の大型小売店は、傘下に問屋を抱えることによってキメの細かいサービスを現地に持ち込むこともできるし、お客の要求に応じた品揃えをしたり、ワン・ストップ・ショッピングで何でも揃うレイアウトをすることもできる。また催し物をしたり、遊び場を常設することによって、お祭り気分を醸し出すこともできる。最近、東南アジアに進出する日本の流通業者がお客を集め、人気を呼んでいるのは、「安さ」以外のこうした便利さや娯楽的要素、すなわち現地の既存業者になかったものが売り物になっているからである。したがって日本の流通業が日本の生産業に比べて著しく遅れているという指摘は必ずしもあたっていないのである。
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